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事例紹介

第1回:「アストモスエネルギー」10年の計で臨む人材育成

アストモスエネルギー株式会社

総務人事部長 米川 泰平(2017年3月現在)

吉田寿の戦略人事が会社を変える
第1回:「アストモスエネルギー」 10年の計で臨む人材育成

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◆プロフィール◆

米川 泰平(よねかわ たいへい)
1964年6月8日生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。

【経歴】
1987年 4月 出光興産株式会社 入社  広島支店経理課
1990年 7月 北海道製油所 管理課
1993年 7月 業務部 需給課
1997年 4月 需給部 計画課(通産省担当)
1999年 7月 東北支店 ホームエネルギー課
2001年10月 東北支店 販売企画課
2003年 4月 需給部 製品課(製品仕入統括)
2005年 4月 出光ガスアンドライフ株式会社 経営企画部グループリーダー
2006年 4月 アストモスエネルギー株式会社 経営企画部 部長補佐
2008年 4月 関東第一支店 副支店長
2012年 1月 企画本部 経営企画部長
2014年 4月 管理本部 総務人事部長
2017年 4月 関東第二支店長に就任予定

 

 吉田:今回から「戦略人事」を1つのキーワードとして、企業の人事担当責任者の方にお話を伺うというシリーズを始めることになりました。その記念すべき第1回目ということで、弊社の業務に対して日頃から多大なご協力を得ているアストモスエネルギーの米川部長にご登場いただいたということになります。

米川:先日、御社の細川社長が弊社の人事担当役員のところに挨拶に来られ、リップサービスも含まれていると思いますが、「色々な人事の取り組みをしている『最先端』の企業」と、弊社のことを評されていました。でも、当事者である我々にはそんな認識はありません。人事部スタッフの数も少ないなか、できるところ、問題のあるところから着手しているというのが現状です。

 この数年で特に力を入れて取り組んでいるのは、20代を中心とする若手社員の早期育成です。当社は事業統合前の社員が43歳以上、統合以降の社員は33歳以下であるため、働き盛りの30代半ばの中堅社員が手薄という歪な年齢構成で成り立っています。社員の50%を占める、事業統合後に入社してきた20代を中心とする若手社員に、中堅社員が担うべき仕事をさせているので、その育成が一番の経営課題だと思って取り組んできました。そこにビジネスコーチングやナレッジファシリテーションなど、御社が提供するサービスの力を借りてきたわけです。

部長職対象の研修あるいは新任役職者(副部店長)研修などは、ここ10年、御社にお力添えを頂いておりますが、役職者2年目以降や部長になって以降の研修、経営人材の育成は、未だ手つかずの状態です。

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アストモスエネルギー株式会社 総務人事部長 米川 泰平氏

吉田:経営人材の育成もテーマとしてはありますが、むしろ経営視点で人事を捉えるということが、いわゆる「経営人事」や「戦略人事」の領域ですね。これまで、多くの企業では、人事には「人事の砦」ともいうべきものがあって、同じ管理部門でも他とは相容れませんでした。特に伝統的な会社の人事は管理部門内でも力を持っていて、経営トップや経営企画が考えている経営や事業の方向性との連携を取らずに、人事の領域だけで人の異動などを考えてきました
   
 ところが最近は、経営トップはどういう意向で、自分の会社のことを考えているのか、それに必要な人材はどういう人材なのかなどを考慮し、あるべき人材像や採用基準もよく議論されるようになりました。昔は「明るく、強く、逞しく」の3拍子がそろっていればOKというような人の採り方をしていましたが(笑)、今では、こういう方面で事業を伸ばしていくから、そういう人材がどれだけ必要なのかというような議論もなされるようになってきています。

 御社の場合、人の採用にかなり力を入れていらっしゃいますし、各現場が求めている人材をきちんと採用することに相当な時間と労力をかけておられるように思います。そういう観点からみると意識する・しないは別にして、戦略人事的なアプローチを実践されている会社だと感じますね。

米川:そういう意味での努力はしていますし、私も経営企画部長から人事部長になりましたので、経営計画を踏まえながらの採用や育成、登用を意識できているのかもしれません。私のいた出光興産もちょうど3年前に私が人事部長になったタイミングで経営企画部長が人事部長になっていますから、そういう会社も、もしかすると増えつつあるのかも知れませんね。

吉田:まさにそうです。そういう時代的な趨勢にあるようにお見受けしますね。

人事ワーキングで新しい領域に挑戦!

米川:これまでは、「若手育成」を1つの大きなテーマとしてやってきましたが、これからは、少し別な視点で新しい人材育成の領域に力を入れていこうと考えているところです。

 昨年12月に、役員と部長で構成される人事ワーキングを立ち上げました。
背景には、エネルギー価格の下落を中心とした事業環境の大きな変化があり、海外・国内ともに従来の収益の柱が揺らいでいるなか、新たな成長戦略を描く必要に迫られていることが挙げられます。また新たな成長戦略にはリスクが伴うのでリスクを適切にコントロールできる専門性の高いコーポレート人材が必要となります。
しかしながら、そのような人材が社内に豊富にいるわけもなく、今後の事業展開に必要な人材開発あるいは人材育成に取り組んでいかなければならないと考えています。そういう問題意識から、今求められる人材像を明確にして、そのために何をやったらいいのかを考えていこうと。人事を取り巻く課題というのは、各階層にたくさんありますが、とりあえずやろうということで始めています。

 あとは、本来の人事部で4月以降やっていこうと思っているのですが、求められる人材像を明確にして、経営者目線を養えるような役職者のローテーションも考えようとしています。早いうちに全社を俯瞰できる部門や関係会社の社長を経験させるとか、そういうイメージですね。それから、専門職の育成。専門職というのが、このホワイトカラーの会社でどこまで必要かというのはあるのですが、法律の専門家や財務、国際取引の専門家のイメージですね。
   
新人教育は、なんだかんだ言って、入社後の3年間が大切だと考えています。最初に出会う上司や先輩がどう指導するかで社会人人生が決まるような、その新人の配属というのをどう考えるのか、誰の下につけるのかということですね。あと、採用にはこの3年間力を入れてきましたが、「ここまでで良い」という限界がないので、一層の強化をしたいと思っています。

 ワーキングのメンバーは、経営企画、国際、販売、新規事業の各事業部門の部長たちで、人事は私だけです。4月の定期異動で新しい顔ぶれになるので、新体制下で新たにメンバーを募り、人事小委員会あるいはワーキングという機動力を重視したチーム編成で4月以降もやっていこうと話しているところです。例えば、社員育成に関する基本的な考え方、役職者、専門職社員、新人、採用などのそれぞれの役割期待はこうだ、それに対しては基本的にこう考える、とかいうことをそれぞれの階層で考えていく。弊社の場合は、総合職220人のうち半分が役職者なので、それで社員6~7割はカバーできると思います。

吉田:役職者が比率的には多いですね。

米川:役職者に関しては、役割期待、基本的な考え方、今後あるべき姿、今の問題点、こう改善していきたい、社内外どんな研修をしていくかなどをまとめています。これに関するワークシートをいくつか作っていて、経営陣と人事部とコーポレートの人事以外の部署と各事業部門で、それぞれ役職者育成や部下の指導・評価、異動配置に関して、何を各事業部門で手分けしてやっていくかという課題のとりまとめを、各役員や本部長にお願いしているところです。

 確かにそういった意味では、旧来通りMBO(目標管理)を中心とする育成評価システムのみではなく、結局、発端は従来の儲け方だけでは立ちいかなくなってきて、成長戦略とかコーポレートの機能とか、それを実行できる人材を各階層でどう育てるかということを、どちらかというと事業部目線で検討をスタートさせて、考え直しているということですね。

吉田:組織の変更はもうお済みですか? コーポレート部門ができて、総務人事部が総務部と人事部に機能分化する予定でしたね。

米川:4月1日から新組織です。

吉田:それによって、コーポレート機能の強化と各部門の役割がより明確化されますね。そういう動きの中で、組織もあるべき方向に見直されているのではないかとお見受けしています。

米川:やはり国内需要が伸びないと、じゃあどうやって大きくなるかと。M&Aだ、買収だとなると、法律の専門知識が必要なので、それで公募でそういった専門人材を採用しようという動きになり、一連の流れにつながっています。

吉田:M&Aは海外も視野に入れていらっしゃるんですか?

米川:海外もそうですね。大型案件は自分たちの力だけではまだできないので、向こうの企業と事業提携をする。あるいは共同出資ですとか。国内の場合は、お互いに国内の需要減退で悩んでいる同業者との、規模はいろいろありますけど、いわゆるM&A、買収するケースもあれば、統合とか業務提携ですね。

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ビジネスコーチ株式会社 常務取締役 吉田 寿

想定通りだった「10年前に作成した社員名簿」

吉田:コンサルタントの立場から拝見していてつくづく感心するのは、御社の場合、社内の人員構成の変化を前提としてきちんと次の打ち手を考えていらっしゃるところなんですね。

 ちょうど会社ができて10年。会社を10年かけて統合してきて、10年を1つの節目として捉えている。振り返って考えてみると、その当時から在籍している社員の人たちも随分年齢が上がってきて、その次の世代が手薄になってきた。だから、最近では戦略的に若手を採用して、積極的に次世代の社員を育成していこうとするスタンスが明確に出ていますよね。同時に、今後10年先を見越して直面するのは、社員の高齢化ですね。そういうところも見据えて、人の育成をどうすべきかをきちんとお考えになられている。

 少し大げさな表現になりますが、私は常々、「国家100年の計なら、人材育成は10年の計」と申し上げています。つまり、人の育成は、10年タームで考えないと成就しないということです。このような観点からすれば、御社の人材育成への取り組みは、極めて戦略人事のテーマと言えるわけです。

米川:10年前、2006年に会社を立ち上げた時に、私は経営企画部で事業戦略、まさに中期の経営計画を作っていたのですが、そのとき、内々に「2017年の社員名簿」というものを作っていたんです。10年後、どんなメンバーになるのかな、と。今、2017年になりましたが、こればっかりは想定通りですよね。みんな10年歳をとって、中堅社員がいなくなって。ちょうど5年前ですが、経営企画部長になったときも、その中間レビューではないのですが、「2017年問題」と称して、経営企画部長の立場で人事に提言をしました。社員30代不在、担当者が全部20代というのは、すでに経営企画部長時代に大騒ぎしていたんです。役員の中には「会社が若くなることの何が問題なんだ」という人もいました。「いや、それでも中堅社員がいないのは大問題ですよ。新任役職者が出せないって大変なことですよ」と大騒ぎして、結果的にそういう経緯もあってなのか、翌年に人事部長の辞令をもらいました。

吉田:だいたい問題提起すると、当の本人に対して「お前やってみろ」って話になりますよね。

米川:中堅社員が手薄になるという懸念は、10年前に会社を作ったときからぼんやりとありました。10年後の今、20代中心の若手社員に中堅社員の仕事をさせる、背伸びさせる、ストレッチさせるというのは、言うのは簡単ですが、実際には難しいですよね。

吉田:そうですね。やはり業務は、「教える・教えられる」という経験があって、初めて人は育つものですからね。その中堅どころがスコンと抜けて、じゃあ誰に教わるのということになりますからね。

米川:だから、支店長が直接教えなければならなくなります。

吉田:そういう状況になってしまっているのも、ちょっと問題ですね。

米川:それが、結果的に「支店長ナレッジブック」の作成につながることになりました。
 支店を統括する販売部長と協議した結果、支店員より先に支店長だろうということになり、手始めに指導者用のナレッジブック作りに着手したんです。

吉田:教育には、さまざまな手段・方法があります。しかし結局、仕事を覚えるには仕事上でないと難しいところがありますよね。座学で学べと言っても、限度はあります。どこかそこら辺のセミナーで聞いてこいと言っても、外部の話は聞けますが、当社において、どう自分で仕事上のスキルを磨くかと言えば、やはり仕事を通じてしかあり得ないわけです。その時に適切な指導者がいてくれるのと、いてくれないのでは、全然育ち方が違います。

「儲からない時代」こそ、積極的に人に投資する

米川:ストレートにとられると誤解を招くかも知れませんが、今、ワーキングメンバーで話し合っているのは、向こう4~5年は原油価格も低迷していて、ジタバタしても、もう何をやっても恐らくあまり儲からないだろうということです。だから早い段階でどんどん人をローテーションさせて、人材育成を徹底的にやろうと、そんな話をしています。

 同業他社には、会社が儲かっていないから、一切、教育費や研修費を使わせてもらえないというところもありますが、うちの場合は、どうせ投資するなら人に投資しようという考えですね。

吉田:業績が低迷すると真っ先に予算が切られるのは、やはり教育・研修予算ですからね。

米川:業績が低迷している中でも、儲けられる社員を育てていこうという感じですね。確かに事業経営と人事がすごく近い会社ではありますね。

吉田:御社の場合も、「求められる人材像」を真摯に検討されていますね。いろんな会社を見ていると、まずここから入る会社が最近増えているというのが1つのトレンドと見ています。

 私は仕事柄、人事制度を見直すとか、再構築する仕事が多いのですが、新しい人事制度を作る上で何が最初の出発点になるかという時に、うちの会社として求めている人材とはどんな人材かということが重要になります。それがブレてしまうと、結局、そういう部分が制度にも反映されてしまいますから、この点は特に押さえておきたいとする会社が増えてきているのが最近の傾向ですね。それで、一生懸命この部分に議論を集中する。実は昨年、私のクライアントには、この部分だけで半年くらいの時間を費やして議論を尽くした会社もあったくらいです。

米川:昨年の7月くらいに、期の真ん中の部店長会議で、「10年後に求められる社員像」を描いて説明し、今後の異動配置・キャリアパスもこういうのを目標にやっていくと打ち出しました。特に若手社員には刺激になったようです。
道半ばですが、この1年、迷いながらもいろんな検討を行ってきました。

吉田:でも拝見していると、いつもきちんとお作りになりますよね。

米川:社内全体の育成マインドを掻き立てるために、隔月で「育成メールマガジン」を全社員に向けて、発行しています。内容はまず、役員からのメッセージ、自分の若い頃を振り返って、800字~1000字くらいですかね。

 それから、我々部店長クラスの若い頃の失敗談。失敗から得た教訓みたいな話ですね。それから、今月の推薦図書や、文章の書き方、今月の研修日程など、自己研鑽を支援するコーナーを設けています。

吉田:反響はいかがですか?

米川:多忙を理由に読み飛ばしている若手もいれば、ちゃんと読んでくれて、メールで感想をくれる若手もいます。
 収益環境が厳しい中で、会社がやるべきことは単なる商取引から事業創出のような世界に変わっていきます。当然、事業創出をやると、コーポレートでの財務や法務という力が必要になってくるので、そういう人材も必要です。従来の、仕入れて売り歩くという営業担当者が必要ないということではありません。両者バランスよく人材がそろえられれば理想ですよね。国際コーポレートの経験があって、戦略的な思考で継続的に企業変革ができるというコーポレートの専門家ですよね。

 リスクコントロールのノウハウ、社外の出向経験、若いうちに関係会社の社長、というようなイメージなのですが。これはキャリアパスだけでできるものではないのでしょうけど、キャリアパスもそういうものを踏まえて再構築していかないといけないと感じています。今でも10年3場所を経験させるという原則はあるのですが、人員構成が歪だと計画的な異動配置は簡単ではないな、と実感しています。

吉田:この前、他のセミナーで、日清食品さんが自社の事例紹介の中で同じことを言っていましたね。10年3場所。

米川:三菱商事も10年3場所ですね。うちも10年3場所と思っていたのですが、多様な経験のためには3場所では足りないかもしれない。成長には個人差があるので、決め打ちしないほうが良いのかもしれません。

吉田:でも10年3場所、3年に1回ローテーションですよね。

米川:最低3年で、早くて2年で異動させる。若手には2年で卒業するつもりで頑張れとハッパをかけています。但し、専門家養成はこれとは別の考えが必要ですね。

異動は2つ先の所属をイメージする

吉田:これから10年先を見据えて、具体的にどのように進めていかれるのですか?

米川:入社3年もそうなんですが、20代のうちに全社員がバランス良く仕事を経験できるわけでもないので、例えば、今あの支店にいる彼ならば、たぶんこういう全社目線で仕事ができるはずだ、と。だから彼には、最初の支店の後、普通ならもう1カ所支店を経験するところを早めに本社に引き上げて、まず経理で会社全体のお金の動きを学ばせよう。その後、経理を3年で卒業したら、国際部門に移して、輸出入の仕事を経験させよう、というように、個々の持ち味や適性を見極め、次の場所と、その次の場所くらいをイメージして異動させる。

 本来、どこの会社もそうやっているのかも知れませんが、少なくとも当社は、年齢構成がすごくいびつで、今までは計画的な異動・配置ができなかった。正直なところ、人が足りないから補充する、みたいなところがありました。今後は、今まで出向させたことがないような金融機関だったりシンクタンクだったり、海外留学、そういう経験を、候補者が何人か出てきていますので実現していきたいと思います。

吉田:確かに若いうちに全く違う仕事の経験をするのは、とても大事ですよね。同じ業界で同じ状況で、自社内のローテーションもあるんですけど、各社で同じ仕事の中でぐるぐる回っている感じじゃないですか。時には他流試合じゃないですけど、若武者修行じゃないですけど、これまで経験のないところに1回出してみる。そういうことを検討する会社も増えていますね。

米川:我々の業界には、日本エネルギー経済研究所という世界でもトップ10に入るエネルギーに関するシンクタンクがあり、2年前に会員になっているのですが、毎年ここから研究員派遣の要請を頂いています。なかなか適任者を捻出できないのですが、更に業務を効率化し、人員に余裕を作ることで、このような社外道場にぜひ、出向させたいですね。

 このようなシンクタンクには、電力会社や都市ガス会社、石油会社、自動車メーカーなど、エネルギーに関連する一流企業からエース社員が出向しており、みな2年くらいで帰るのですが、そこで培った人脈、交流は40歳になっても50歳になってもずっと続くようです。そういう無形財産を作るためにも、ぜひやりたいところですね。

吉田:グローバル人材の育成についてはいかがですか?

米川:国内事業部門の社員を年2回、海外で研修させています。期間は2カ月間、アブダビ6週とシンガポール2週のイメージです。この1月からも、これまで技術、物流を経験してきた入社6年目の若手社員が3月まで受講しています。

吉田:それはトレーニーのような感じですか?

米川:研修ですね。国内の人間が海外に行って、すぐに実務やトレーニーができるわけではないので、国際部門ってこんな仕事をしているんだということを、現地で体験してもらうということですね。その中から、素養のありそうな人や強い希望を持っている人を国際部門に持っていく感じですね。

吉田:圧倒的に人材が今、海外に足りていないですからね。

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働きがいを高める1年に!

吉田:先日の御社との定例ミーティングの際に、17年度の方針の中に社員の働きがいを高めていこうというお話があったんですが、このあたりはどういう取り組みをされようとしていますか? 確かGreat Place to Work®をされていますよね?

米川:去年はお休みをしましたが、今年もやって結果が出ました。過去2年連続でベストカンパニーに選ばれましたが、今年は前回よりスコアが落ち、ランクインには至りませんでした。原因は色々考えられますが、Great Place to Work®社からは、部門別に犯人探しをするのではなく、会社全体を俯瞰して全体的にどの項目に問題があるのか時間を掛けて根っこから治療すべきと助言を頂いています。前回はこの結果を踏まえ、経営企画部と人事部が事務局となり、若手有志中心にワーキングメンバーを募り、半年かけて改善に向けて協議を重ねました。職場環境は部門長のマネジメントの影響を大きく受けますが、人事部として定期的に社員の生の声を聞くことは大切ですね。

吉田:確かに部門長で、随分変わりますよね。私も長いことES(社員満足度)調査をやってきましたが、人事異動などで部門長がちょっと替わっただけで、ESのスコアが大きく変動するというケースがありました。

米川:人事部がこれを部門別に見て何かやっていると、正直に答えてくれる社員がいなくなってしまうのではないかという危惧があります。だから、ここは慎重に動きたいと思っています。

吉田:部店長に何が原因でそうなっているのか、改善策や対策を考えさせるというのもありますね。

米川:そういうのも必要ですね。誰だよ、悪い点数つけたの、というように犯人捜しになってしまうと困るのですが。そこは上手く使いたいと思っています。

吉田:以前、ESを他社でやっていた頃にも、部門別のフィードバックシートを作って、全社傾向と比較して、その部門がどういう状況なのかをまとめて報告していたことがありました。

 部門によっても、やはり優れているところと、そうでもないところがありますね。そういうのを概要で整理して、各部門にフィードバックする。その後、それを踏まえて来期どんな打ち手を考えるか。例えば、部門別の年度計画の中にきちんと反映してもらう。改善策を講じてより実効性を高める。その打ち手を打ったあと、効果測定的にまたES調査を実施する。それでどういう変化が生じたかを定点観測的に観察するのです。おっしゃる通り、犯人捜しになってしまうとまずいですから、そこは慎重に実施するわけです。

統合10年の節目に「育成にストレートに直結する評価」を検討

米川:あとは、役員間協議の中では、事業統合から10年が経過したので、現在の事業環境、人員構成などを踏まえ、MBOや行動評価のあり方について、見直しを検討したらどうかという声が多数上がっています。

吉田:今のやり方を変えるということですか? やめてしまうということですか?

米川:やめるというよりは、ちゃんと育成にストレートに直結するような評価の仕方ですよね。例えば、現在は、専門性の高い人材の育成・評価という考え方が確立されていません。今の当社の行動評価は課題設定、判断決断、対処実行、折衝調整、専門性、育成指導の6項目で、各項目6分の1の評価でしかないので、専門性の高い社員は不利なのです。ゼネラリストと同じような配点、比重、構成比で専門性を評価されているので、ここ2~3年、見直すべきとの声が多く、役職者も担当職掌と同じ比重の割合なので、役職層ほど育成指導力や、判断決断力、企画力などの比重が高くあるべきだという意見が多く出ています。4月からの人事部が取り組むべき大きな課題です。

吉田:それはちょっと変えたほうがいいかも知れないですね。

米川:またこれは物理的な問題ですが、紙面で管理しているMBOや行動評価のシステム化も検討したい。300名の会社ですが、部門別比較、全社集計などかなりの労力がかかっており、これに成長の記録のような経年管理をしようとすると、手作業では限界ではないかと感じています。17年度中に次の仕組みを考えて、外部のコンサルタントの力も借りて、18年1月か4月くらいから新しい評価制度導入の青写真が描ければよいなと考えています。

吉田:これまでの人事制度の傾向は、全社員一律管理なんですね。だから、その発想が強い場合には、評価項目のウェイトもあまり変わらないんです。どんな仕事をしていても同じ評価項目で同じウェイト。しかし最近は、先ほど若手のローテーションの話も個別個々にみて、次の職場やその先までというようなことをおっしゃっていましたが、全社員一律管理から個別管理に変わってきているというのが、最近の人事管理の傾向です。

 なので、評価基準についても、担当している仕事やそれに求められる能力、成果・業績、そういうものをもう少し細分化して、きちんと評価する。そういう方向に変わってきています。最近では、「タレントマネジメント」という言葉もよく使われるようになりましたが、これも一人ひとりの資質・能力をみた上で個別管理ができるような環境にまずしていくという話なんですね。いろんな会社の話を聞いていると、皆さんそちらの方向に行っている気がします。

 これは、人事としては結構大変なんです。極論すると一人ひとりの人事管理、一人ひとりの将来のキャリアマネジメントをしていかなければならなくなるわけで、そこまで人事としてサポートしないと、なかなか人材育成には結びつかない。
 人それぞれ一長一短あります。得手不得手もあります。それを同じようなやり方で、同じような形で育てようと思ってもまず無理で、やはり伸ばすところは伸ばして、ダメなところは改善して、強みを伸ばせるような人事施策を打っていく。いろいろな会社の取り組みや、求める人材像から始まって個別個々の人事ローテーションまで考えるということになると、そこまできちんと手が届くような人事管理や人材マネジメントが実践できることが、人事のあるべき姿になってくると、そんな感じがしていますね。

米川:現在の人事制度は、事業統合時に先輩たちが長年の実務経験を織り込んだ大作です。またその後10年掛けて時代に合わせマイナーチェンジしているので、他社と比べ劣っているとか、時代遅れだとは思っていません。しかしながら、次世代の事業戦略に対応するために専門性の高い社員を採用、養成しようという新しい人材育成の考え方には、小手先の修正では対応できません。事業環境が変わり、会社が変わっていくなかで既存制度のあり方と、新しい考え方をどこで融合させて、いつ次に乗り換えるかが重要ですね。

吉田:なかなかこれまでのやり方を変えたり、価値観を変えたりするのは、特に人事の場合は難しいですね。そんなこと本当にやっていいの?とか、今までこういうやり方でやってきたのにすぐに変えてしまっていいのか?とか、変えようと思うと、結構そういう抵抗勢力が実はあるものです。

米川:現在の人事制度は2008年に導入していますので、2017年の今年が10年目になります。10年一区切りと言いますか、経営にとって9年も10年も変わりはないのですが、10年経ったからというのは1つの理由付けとして変えやすい状況と言えますね。

吉田:そういう区切りというか、節目は大切ですね。

米川:これを活かしたいですね。

吉田:この節目を活かして、新たなマネジメントスタイルに変わっていくという のもいいのかもしれませんね。

米川:どうしても新しい仕組みにすると、過渡期的に給料が落ちるとか、評価が落ちるということを危惧する社員が出てきますけど、それは何をやっても出てきますから、何か救済措置を設けて乗り切っていくしかないと思います。

吉田:仮にそういう状況になっても、リカバリーが効く仕組みであることも重要なんですよ。これまでだと途中で差がつくと、年功主義の年次管理がずっと続いて、いったんついてしまった差がそのまま定年まで縮まらないという、リカバリーが効かないかなり硬直した人事制度がありました。そういう価値観をお持ちの人も、まだまだ世の中的には多いんですね。そうではなくて、評価によっては、いい時もあるし悪い時もあると。悪い時でも、悪い評価がついたからといって、全く挽回不可能な仕組みではないということも、実は大切なメッセージなんです。

新人事部の課題とは?

吉田:そろそろ時間が参りました。最後に、これから人材育成に取り組む意気込みなどをお聞かせいただいて、締めくくりとさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

米川:会社ができて10年経って、エネルギー業界の事業環境は必ずしも楽観視できるものではありません。しかしながら、市況や為替、競争相手など、今の環境は会社ができた10年前とさほど変わりはありません。でも、10年前、我々が会社をつくった頃は、世界一の会社をつくるぞ、いい人材を集めていくぞという、どこにも保証や確証はなかったんですが、そんな意気込みでやっていました。
 当時は、20代の若手不在の会社であり、30代、40代、50代の仲間で会社を立ち上げて、その中核にいた50代の先輩たちが20代の若手社員にちょうど10年間で置き換わった。若手が増えて、本来ならば活力がみなぎっている会社であってほしいし、そうあるべきなのでしょうけど、事業環境が追い風から一気に原油安となり、事業収益も停滞気味なので、何となくモチベーションが揺らぎはじめている状態です。
 しかし、10年前と何が違うかと言えば、何も変わっていない。むしろ若手が増えて、チャレンジしなければいけない課題が10年前よりさらにたくさん出てきています。怖いもの知らずといったら語弊がありますが、いろんな新しいことにチャレンジしたいという、フットワークのいい若手たちが、次々にこれまで触れたことのない新しい課題や新しい市場、新しいお客さま、こういうものに積極果敢にチャレンジする会社、組織にしていきたいですよね。
 そのような環境に臆せず飛び込んでくる新人を採用して、育成して、挑戦意欲が高く、若くても業界をリードしていくような社員を生み出す、そういう社員が集まる組織にいかにしていくかいうことが、新人事部の課題だと思っています。

吉田:ぜひそういった課題にこれからも取り組んでいってください。

米川:スピード感を持ってやっていきたいですね。

吉田:微力ながら我々もそのお手伝いを、これからも継続的にさせていただきたいと思いますので、今後ともぜひよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。

米川:ありがとうございました。

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