資料ダウンロード
  1. TOP>
  2. BCウェブマガジン>
  3. 第5回:「上書き」される評価基準と「影響」のマネジメント

BCウェブマガジン

第5回:「上書き」される評価基準と「影響」のマネジメント

橋場 剛 橋場 剛

ビジネスコーチの橋場です。

今月2012年10月、約2週間の間に、
ヨーロッパ・アジア・中東地域の5ヶ国を訪問する機会に恵まれました。

訪問したのは、
アラブ首長国連邦(UAE)、イタリア、ギリシャ、クロアチア、中国です。

各国・各都市の文化に触れるたびに、
私の頭の中や気持ちの中で自然に起きる反応は、
それぞれにおける「文化の違い」と「その違いが居心地が良いか否か」
という感覚的なものでした。
前者は事実で、後者は評価です。
そのとき、基準になるのはいつも日本です。

今回イタリアでホテルに泊まった際に、少し面白い体験をしました。

ホテルの客室には「お客様アンケート」があり、
サービスについて次の5段階で評価するよう
評価項目が英語で書かれていました。

5点:Excellent
4点:Good
3点:neutral
2点:Not Good
1点:Bad
  
ここまではよくある普通のアンケートなのですが、
違ったのはここからでした。

よく読んでみると、最後に日本語で以下のように書かれていました。

”日本人のお客様は、サービスに満足している場合、
「3点」ではなく「4点」以上を付けるようにしてください。”

きっとこのホテルを多くの日本人が利用しているのでしょう。
思わず「ん?」と思いました。

ここから読み取れることは、
少なくともイタリアのこの会社(ホテル)は、日本人に対して、
 
<日本人はサービスに対する評価が厳しい(採点が辛い)> 

という仮説を持っているということです。

裏を返せば、日本のサービスレベル・ホスピタリティの質の高さを
認めているからなのかもしれません。

そして、日本人はホスピタリティに対する期待値が高いから、
日本ほど顧客に対するホスピタリティが優れていないイタリアにおいては、
イタリア人と同等の評価基準で評価してもらいたい、という
考え・思惑があるのかもしれません。

しかしながら「『3点』ではなく『4点』以上を付けるように」という
「指示的・命令的」な文言はある意味で、
「日本人の評価の尺度」がイタリア側の都合で
勝手に「イタリア人の評価尺度」によって上書きされている、
とも言えます。

なぜ、今回のコラムで上記のエピソードを引き合いに出したかと
いいますと、上記のことは、エグゼクティブ・コーチングにおいて
見られる課題との或る共通点があるからです。
 
それは、
「人間は往々にして自分の都合の良いように評価基準を設定する」
ということです。
エグゼクティブ・コーチングが経営陣にとって有効な理由は
まさにその点にあります。

多くのエグゼクティブは、自分なりのやり方で、
自分が最も効果的と考える方法で、マネジメントをし、
部下にメッセージを伝えるものです。
もちろん私自身もその例外ではありません。
注目していただきたいのは「自分なりのやり方で」という部分です。 

エグゼクティブ・コーチングが焦点を当てるのは、
コーチを受ける本人が及ぼす周囲に対する「影響」であり、「印象」です。
これは「自分なりの評価」ではなく、「第三者による評価」です。

前述のイタリアのホテルが行なったサービスに対する評価が
満点の5点になるためには、少なくとも以下のことが必要になります。

1.質の高いサービスが提供されること
2.提供されたサービスを、受け手が「質が高い」と感じることが
  できること
3.「質が高い」と感じたことを、受け手が正しく評価し、
  正しく表現できること
   
上記1は、サービスを提供する側の「能力」と「実行力」の問題
上記2は、サービスを提供される側の「感性」「美意識」の問題
上記3は、サービスを提供される側の「評価する力」と「表現する力」
の問題

です。

1と2と3との間には常に多かれ少なかれギャップがあり、
これらのギャップが埋められない限りにおいては、
サービスを提供する側と提供される側との間の認識や評価の差は、
決してなくなることはありません。

エグゼクティブ・コーチングで扱われる最もありがちなギャップの例は、

A.ビジョンをしっかり伝えている(と自分では思っている)
B.ビジョンがしっかり伝わっている(と相手が感じている)
C.ビジョンがしっかり伝わったと感じたことを、
  (相手が自分に対して)言葉で表現した

といったような、A・B・Cの間で生じるギャップです。

エグゼクティブ・コーチングの場面では、
ついコーチを受けるクライアント側の意識・発言・行動に焦点が
当たりがちですが、クライアントの行動変化を評価する
周囲のメンバー(=ステークホルダー)の側の「評価する力」と
「表現する力」もきわめて重要な要素です。

エグゼクティブが、部下の能力に応じて
コミュニケーションの取り方を変える必要があるのは、
同じ伝え方をしても、伝わり方は十人十色であるためです。

「伝わる」という1つの言葉に関しても、
人によって言葉の解釈は異なります。

例えば、人によっては、
<部下がビジョンや目標を「情報として記憶している」>
という時点で「伝わっている」と考える人もいます。

あるいは、<部下がビジョンや目標を「情報として記憶している」>
だけでは不十分で、<部下がビジョンや目標に向かって、
具体的に行動計画を立て、かつ、積極的に行動に移している>
という状況になってはじめて「伝わっている」と考える人もいます。

「伝わる」という言葉についてどのような解釈があるにせよ、
エグゼクティブ・コーチングの最終的なゴールは、
「ビジネス上の成果を生み出すこと」です。

そのための手段として「ビジョンや目標のメンバーとの共有」があり、
「ビジョンや目標達成のための行動」があります。

エグゼクティブ・コーチングでは、
評価される側(コーチを受ける人)も
評価される人(コーチの上司・同僚・部下)も
相手との関係性において行なわれる行為(=例えば「伝えること」や
「承認すること」)がどのような意味合いにおいて価値・結果を
生み出すのかを考えることで初めて高い成果を生むことができます。

したがって、エグゼクティブ・コーチには、
評価する側と評価される側が発する言葉の意味合いを、
深いレベルで理解する必要があります。

このメルマガを読んで下さっている読者の皆さんは、
自分が発したメッセージが、相手にどこまで伝わっているかを
どのように確認されているでしょうか。

「自身が伝えたメッセージは、周囲にきちんと伝わっていますか?」

この質問に対する答えが「No」であるならば、
あなた自身の伝え方には少なからず工夫の余地があるということです。

そして、どのような工夫の余地があるかを教えてくれる唯一の方法は、
あなたに関わる周囲の方からのフィードフォワードであり、
フィードバックを依頼し、それに対して真摯に耳を傾ける、
ということです。

執筆者プロフィール

橋場 剛(はしば ごう)

ビジネスコーチ株式会社 専務取締役
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

アクセンチュア株式会社にて主に大手ハイテク企業に対するコンサルティング業務に携わる。同社マネジャー及び企業経営を経て、当社設立に参画。2010年1月より現職。
大手総合電機メーカーにおけるWeb受注納期回答システムの導入支援、開発購買領域の業務設計・システム化要件定義を実施し、大手企業の業務効率向上を実現する。大企業へのコンサルティング業務の経験を活かし、経営者、マネージャーら50名以上に対してコーチングを実施し、ビジョンの明確化、業績の向上に寄与する。
著書に『優れたリーダーに変わる たった1つの行動』(中経出版)、『ダイエットに成功する人が会社を活性化できるワケ』(扶桑社)がある。

BCメルマガ登録を!

最新のイベント情報やホームページでは紹介していない
コーチング・ノウハウなど、役立つ情報をお届けします。