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第6回:「おもてなし」を輸出する~企業理念はアンカー~

川邊 彌生 川邊 彌生
 <台湾の発展>
 ビジネスコーチの川邊です。
 先日、10年ぶりに台北を訪れました。
 久しぶりに訪れた台北は、主要道路に沿った建物が
 近代的なビルへと変わり、地下鉄やハイウェイも建設され、
 交通網の発達した美しい都市へと進化していました。
 街の中心にはアジア最高の高さを誇る超高層ビル台北101がそびえ、
 その展望フロアからは、街の様子が良く見て取れます。
 
 郊外には、アジアのシリコンバレーと呼ばれる
 新竹サイエンスパークを眺めることが出来ました。
 新竹サイエンスパークには、世界一のICファンドリーメーカーである
 TSMCが本社を構えていますが、2007年に開通した
 台湾高速鉄道(台湾新幹線)を使えば、40分ほどで行けるそうです。
 こうした台湾の進化を見ると、
 日本人として心穏やかでないものを感じます。
 香港で感じるアジアの勢いとはまた異なる、
 地に足がついた元気の良さを感じて、日本は追いつかれるどころか、
 抜かれているかも、と心配になります。
 とはいえ、これらの台湾の発展を支えているのは、日本の技術です。
 台湾101の毎分1,010メートルで上昇し、ギネスブックに載っている
  世界最速のエレベーターは東芝製です。
  台湾高速鉄道も日本の新幹線技術によるものです。
  盆地に囲まれた台北をつなぐトンネルも日本の建設会社によって
  施工されたものです。
 「物作りの日本」あっぱれですが、
 台湾に輸出されているのは技術やノウハウだけではありません。

 <「おもてなし」を輸出する>

 今回、台北で是非、訪れてみたいところがありました。
  台北近郊の北投という温泉地にある「日勝生加賀屋」です。
 
  2010年にオープンした「日勝生加賀屋」は、石川県和倉温泉の
 老舗旅館「加賀屋」と台湾企業の共同出資による旅館です。
 
  「加賀屋」は、<プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選>において、
 32年連続総合第1位の評価を得ている名旅館です。
 
  台北からタクシーで30分、北投温泉に着くと、
  まさにそこは伊豆あたりにありそうな温泉地で、
  ほのかに硫黄のような温泉の香りが漂う中、
  旅館を出た老夫婦がのんびり散歩を楽しんでいました。
 
  いくつか並んだ温泉施設の中でも「加賀屋」は立派なビルですが、
  入口には提灯が掲げられ、お客様を見送る仲居さんが着物姿で
  整列をしています。
 
  ロビーに入ると、日本の旅館でよく見られるように、
 宿泊客が選べるようにと、色とりどりの浴衣が並べてあります。
 
  朝食だけ取りたいと伝えると着物姿の仲居さんが、
 丁寧にレストランへ案内をしてくれましたが、
 並んでいるのは日本の旅館となんら変わらない和食です。
 
  しかし、従業員はすべて台湾人であり、宿泊客も現地の方ばかりです。
 そこで交わされている言葉は中国語ですが、宿のしつらい、よそおい、
 そして仕草は日本そのものです。
 
  もてなされる側ももてなす側も<日本体験>を楽しんでいるように
 見えました。
 
  そもそも日本の「加賀屋」は、衰退する日本の市場を懸念し、
 早くから台湾に販路を開拓し、松山(台北)と小松空港を結ぶ航空機で
 訪れる台湾人客を獲得しています。
 
  台湾人が日本の「おもてなし」を非常に好むことを知った2代目社長が、
 台湾企業の熱烈な要望によって決断したこの共同事業は成功している
 ようです。
 
  ところで、台北のホテルのフロントでは英語はあまり通じず、
 日本語で話しかけるとスタッフに安堵の表情が浮かんで話が弾みます。
 
  ある香港人が「台湾人は日本人の真似をしたがる。その方が得だから」
 と言っていましたが、かつて日本の統治時代が良かったので、
 親日家が多いとも聞いたことがあります。
 閑話休題。

 <企業理念「おもてなし」を実現する>

 「加賀屋」の成功は、もともと日本に好意的であり日本文化を好む
 台湾であったからかも知れません。
 台湾人が、日本人と共通の価値観を共有できる人達であることも
 大きな要因でしょう。
 そして、もちろん、日本の「おもてなし」を実現するために
 台湾人の従業員の教育は徹底されているに違いありません。
 しかし、どんなに教育をしても、外国人が外国人の顧客に日本と
 全く同じサービスを行うには、よほど監視の目を光らせていないと、
 知らないうちに自国流になってしまいます。
 
 一方、「おもてなし」は心の問題であり、上司が見ていようがいまいが、
 従業員が心から日本の「おもてなしの心」を理解し共感していれば、
 問題なく実現されるものです。
 
 旅館に一歩入った途端に感じる日本ならではのしつらい、
 従業員の振る舞いに感じる日本がメッセージとして感じられました。
 
 つまり、「日勝生加賀屋」には企業理念の「おもてなし」が
 しっかりと表現されていたのです。
 
 これは、日本びいきの台湾だったから成し得たことなのでしょうか。
 企業理念はまさにアンカー(錨)と言えますね。
 
 さて、この企業理念は、異なる価値観を持つ人で成る組織で、
 どのように浸透させて行ったら良いのでしょう。
 
 次回は外国人とのコミュニケーションについて、
 お話をしたいと思います。

 

執筆者プロフィール
川邊 彌生(かわべ やよい)

亜細亜商務教練有限公司 総経理
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
明治大学文学部卒業後、セイコーインスツル株式会社に入社。
その後キャセイパシフィック航空にCAとして入社し、11年間、香港で勤務。
帰国後、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルにおいてトレーニングマネージャー就任。
その後、エルメスジャポン株式会社の人事教育マネージャー、シャネル株式会社においてトレーニング部部長として勤務。
2007年イタリアのファッションブランドにおいて人事部長就任。
2012年同社を退職し、6月より現職。

■実績
キャセイパシフィック航空在籍時に、CAとしての勤務のみならずトレーニングスクールに所属しサービス向上プログラムを指導する。
同社勤務中、英国のトレーニング資格を取得し、グローバルサービスの設計と実践に貢献した。
日本帰国後は、一貫して、富裕層を対象とする外資系ホテル・リテール業界において人事制度構築・人材開発に取り組む。
多国籍のメンバーが構成するプロジェクトにも参画しグローバルなプログラムの設計に取り組む。
また、経営陣として、企業理念とサービスを実行・定着させ企業価値を高める施策を数多く実践する。
マーシャル・ゴールドスミスにも2008年来日時、指導を受ける。

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