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第30回:「中心的な論点が何であるか」をどのように見極めるか?

橋場 剛 橋場 剛

ビジネスコーチの橋場です。

 
私は特にこの1年間、エグゼクティブコーチング、スクール、公開セミナー、
電話によるコーチングプログラム、といった様々な場面において、実に数多くのコーチングセッションを実施しました。
年間150セッションは下らない量をこなしています。

 
コーチングを行ううえでまずはじめに重要となるのが、「何をテーマにコーチングを行うべきか」という問題です。

経営者や経営幹部といったエグゼクティブの方々は実際、同時進行で様々な経営課題に
直面しており、何が最重要テーマであるかの判断がつかないといったケースは決して少なくありません。

 
例えば、

「きょうはどのようなテーマでコーチングを行いますか?」

というコーチからの質問に対して

「きょうは『部下育成』についてコーチングをお願いします」

  
とクライアントが答えたからといって

 
『部下育成』についてコーチングをすることがベストであるという保証はどこにもありません。

 
もしかすると、本当にコーチングのテーマにすべきことは、クライアントが述べたこととは異なり、『部下育成』とはまったく別の内容であるかもしれないわけです。

 
ここで大切なことは、そもそもクライアントが何のためにコーチングを受けようと
しているのか、といったコーチングそのものの目的です。

 
さらに言えば、クライアントがコーチングによって得たい成果を獲得することによって
そのクライアントには最終的に何がもたらされるのか、という意味での『クライアントが思い描くビジョンは何か』という点が重要です。

ここまででコーチングのテーマとなりうる可能性があるフレーズが3つ出てきました。

================================================================

仮テーマ1:部下育成(a)
仮テーマ2:クライアントがコーチングを受ける目的(b)
仮テーマ3:コーチングの目的の先にあるクライアントが思い描くビジョン(c)

================================================================

あなたがこのクライアントのコーチであるとしたら、
この先のコーチングを進めるにあたってどのようにテーマを決めるでしょうか。
またコーチングのテーマを決めるに際して何に留意されるでしょうか。

上記1~3を何かしらの根拠に基づいて1つのテーマに絞り込み掘り下げるでしょうか。
それとも「他にありますか」などという質問を投げ掛けることにより
上記1~3以外の新たなテーマの可能性を模索するでしょうか。

あなたはコーチとしていずれの選択を行うことも可能ですがいずれにしても、
ここでコーチが考えなければならないことは、

 
●「どのようなテーマでコーチングを行うべきかを、どのように決めるのか?」

という点です。

言い換えれば、

●「『中心的な論点が何であるか』をどのように見極めるか?」

という表現で示すことができます。

何をテーマにするか、何を中心的な論点としてとらえるかは上記(b)や上記(c)といった点についてどこまでクライアントの頭の中で明確になっており、かつ、コーチとの間でそれら(=(b)や(C)の問いに対する解答)についてどのくらい
共有化されているか、といった点に対する結論の内容によっても異なります。

つまり、仮に「クライアントがコーチングを受ける目的(=b)」が十分に明確化されており、コーチとの間でそれが十分に共有化されているのであれば、論理的には(b)について殊更に掘り下げる必要性は薄れることになります。

この場合、テーマの選択肢として(b)は消去されることになります。
結果として、ここではテーマの選択肢として(a)と(c)が残ることになります。

ここで重要となるのが、「中心的な論点は何か」「派生的な論点は何か」という点です。

前者はクライアントの目標達成のために解決が不可欠なテーマであり、より前提となる論点のことです。
後者は、前者を考える過程において検討すべき論点ではあるものの、必ずしも最重要ではない論点のことです。

 
樹木で例えれば、前者が「幹」で、後者が「枝葉」です。

 
ここからは実際にあった具体的なケースで考えてみましょう。

   
先日私がコーチングをしている執行役員のA氏が、こんな言葉で会話を切り出しました。

 
「ハシバさん、部下がなかなか期待通りのアウトプットを出さないから、
私は我慢しきれずに『そうじゃないんだよ!』と大声を出したうえに、部下から資料を取り上げて、その場で赤ペン先生をやってしまいました・・・」

 
私はただ黙って、A氏の話に耳を傾けました。

 
「期待通りのアウトプットがでなかった理由は何だと思いますか?」

 
と私が尋ねると、A氏は

 
「何度言っても部下が理解してくれないんだよ、いったいなんでだろうね・・・」

 
と答えるばかりで、そこから話が深まることがありませんでした。

 
こんなとき、読者の皆さんがA氏のコーチだったら、どのようなスタンスでA氏に関わり、A氏の何を変えればよいかについてどのような方法で気づいてもらうでしょうか?

こういうケースにおいて、何が問題かをクライアント自身に尋ねることは決して得策ではありません。
なぜなら、クライアント自身が「何が問題なのか」が分かっていないからです。
ここで求められるのが、「何が問題となっているのか」を見極める力です。
別の言い方で言えば、「中心的な論点が何であるか」を発見する力です。

 
実際に私がA氏に対して取った行動は、次のようなものでした。

 
A氏が部下に期待していたアウトプットはどのようなもので、実際にそのアウトプットを出してもらうために、A氏がどのような言葉で部下に指示を出したかについて具体的に教えていただきました。

 
なぜ、私はこのようなアプローチを取ったのでしょうか。

 
それは
<私(コーチ)が部下の立場に立ってA氏の指示内容を聞いたときに、A氏の指示内容をきちんと理解できるかどうか>
が今回のコーチングの「中心的な論点」だと仮定したからです。

 
案の定、ここに解決の糸口がありました。

 
結論から言えばA氏は、いくつかの抽象的な言葉を織り交ぜて部下に指示を出していたのですが、A氏が何気なく使っていたその抽象的な言葉が具体的にどのようなことを意味しているかについて、部下が分かる言葉で伝えることができていなかったということにA氏が気づいたのです。

 
ここで種明かしをしますが、

 
前述の「きょうは『部下育成』についてコーチングをお願いします」

 
と言ったのは、実はA氏のことでした。

   
しかしながら、私はA氏の発言の前提を疑っていたので、心の中では

 
「本当にそれがテーマなのだろうか?」
「他にもっと重要なテーマがあるのでないだろうか?」

 
と自問自答しつつ、A氏の話を聞いていました。

 
コーチが「中心的な論点が何か」を見極める方法は、論理によるものと、直感によるものがあり、その判断がコーチ自身の実践経験に影響を受けたものであることは決して少なくありません。
直感だけではコーチングはできませんが、論理だけでもコーチングはできません。

 
「中心的な論点が何か」という問いについて、クライアントもコーチも共にその答えが分かっていないと仮定した場合、

 
「本当に重要なことは何か?」
「何が解決されれば、クライアントの目標に近づくことができるのか?」
「それが中心的な論点だと言える根拠は何か?」

 
といった関連する数多くの論点を列挙することが可能です。

 
列挙された論点は相互に関連性を持ちます。
コーチングが限られた時間の中で行われる活動であるという制約を考慮すれば、
擬似論点(形式的な論点)と真正の論点(実質的な論点)に分けられ、後者に集中した対話(ダイアログ)を行うことが重要となります。
そのためには論点の関連性を瞬時に整理することが求められます。

 
それでは、どのように説明すれば「整理」したことになるのでしょうか。

 
例えば、
主張αへの賛否(=論点1)はαという主張自体が成立し、かつ、存在することを論理的な前提としています。
そう考えるのは、存在しないものについて賛否を問う実質的な意味がないと考えられているからです。
αの成否(=論点2)はこの意味で論点1の前提的論点であると言えます(※1)。

 
こうした論点整理が瞬時にできなければ、コーチは限られた時間の中で的確な質問を、適切な表現でクライアントに投げかけることはできません。

 
どのようにすれば論点整理ができるようになるかについての解答は別の機会に委ねたいと思いますが、高い水準で質問力・コーチング力を発揮していただくためには、
その前提として論点整理の技術が必要となることについてはここまでの内容でご理解いただけることと思います。

 
【参考資料】
※1『学修の基本的な技法について』山内惟介著 

 
執筆者プロフィール

橋場 剛(はしば ごう)

ビジネスコーチ株式会社 専務取締役
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

アクセンチュア株式会社にて主に大手ハイテク企業に対するコンサルティング業務に携わる。同社マネジャー及び企業経営を経て、当社設立に参画。2010年1月より現職。
大手総合電機メーカーにおけるWeb受注納期回答システムの導入支援、開発購買領域の業務設計・システム化要件定義を実施し、大手企業の業務効率向上を実現する。大企業へのコンサルティング業務の経験を活かし、経営者、マネージャーら50名以上に対してコーチングを実施し、ビジョンの明確化、業績の向上に寄与する。
著書に『優れたリーダーに変わる たった1つの行動』(中経出版)、『ダイエットに成功する人が会社を活性化できるワケ』(扶桑社)がある。

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