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第32回:日本人の暗黙知「おもてなし」を語れますか?

川邊 彌生 川邊 彌生
■ビジネスマナーは形式知

 

ビジネスコーチの川邊です。

 

2013年、外国人旅行客は過去最高の1000万人を突破し、
政府は2020年には2000万人を目指しているようです。
また、現在、日本に在留する外国人は約200万人ですが、この30年で3倍に増えているそうです。
なかでも在留中国人は全体の3分の1を占める70万人にのぼり、私たちも町中で中国語の会話を耳にすることが増えているように思います。

 

こうした状況からか、最近、中国人社員に対する日本の文化風習を含めたビジネスマナーの研修の御相談を多く受けるようになりました。

 

異文化の接触において、お互いを理解することは重要です。
しかも、日本のビジネス慣習やマナーは、まさに暗黙知。
日本ほど「すべき」論が多い国はないように思います。
法律や企業の就業規則以前に、慣習やあるべき行動・振舞いを前提に成り立っている社会です。
今、「おもてなし」がこれだけ語られるのも、日本人がそこに誇りを持っているからでしょう。

 

この前提を形式知にするために、ビジネスマナーの本は山ほど出版されており、
新入社員研修でもマナーの5原則「挨拶・振舞い・態度・表情・身嗜み」のように、形式知化されテキストになっています。

これを、マニュアルにして形を教えれば外国人も理解し、
日本人が期待するような「礼節」を重んじ「おもてなしの心」で振る舞うようになるのでしょうか。

   

■「ご飯食べたか」が、挨拶の国

 

先日、日本へ進出したばかりの大手中国企業に中国人社員の研修に伺いました。
皆さん、赴任したばかりだとのことでしたが、30代から40代の非常に礼儀正しい、
本国でもエリートであることが推察される方達でした。

 

それでも、日本の担当者から聞いた課題は、挨拶をしない、他人の話に割り込む、時間を守らない等、
商談にいらしたお客様に対して恥ずかしい振舞いがあるのとのことでした。

 

まず、彼らに日本での発見、印象について尋ねてみました。このような質問をした場合に日本人と異なるのは、
質問をするや否や即座に答えが返ってくることです。周囲の様子を伺って譲り合って発言するなどということはありません。

 

代わる代わる「日本人は細かいことにこだわり過ぎてスピードが遅い」
といった厳しい感想が挙げられました。
総論がOKであるなら、各論や細かい書類はあとで何とでもなるのではないか、というのが彼らの考え方です。

 

同時に、日本は予期した以上に美しく、清潔な国であるということも彼らの一致した意見でした。

 

そして、本題であるコミュニケーションについて、挨拶はしないのですか?と尋ねてみたところ、
「日本人はチームワークと言うわりには、同僚の家族に会ったこともないし、隣の人がどういう人かも知らない。
中国は、家族のことを含めて知っているから、いつも会う人にいちいち挨拶はしない」と言うではありませんか。
そこに悪びれた様子はありません。

 

また、挨拶の言葉にしても「ご飯食べた?」がその代わりだと言うのです。  中国は貧しい時代が長く、友人や家族がご飯を食べているか聞いてあげることが、
気持ちを示すことだそうです。

 

また、香港含めて南の人は商売人が多く商売上の損得を考えるから挨拶をする傾向があるとも教えてくれました。

 

これは、作法の問題ではなく、文化や背景の違いであり、善し悪しで語ることはできない、
押しつけることはできないとあらためて感じました。

 

そして、このやり取りをしながら、社会学者の中根千枝氏が著書『タテ社会の人間関係』の中で語っている
「日本人は論理より感情」ということを思い出しました。

 

中国人は、即座に自分達が観察した日本人を語り、自分達の行動の理由を語ります。
一方、日本人はと言えば、こうした場合、誰が話すのか序列や空気が気になるのです。
だから、挨拶の有無が気になるのではないでしょうか。

 

どちらが悪いということではなく、社会の在り方、文化的背景の違いです。
これらの違いを理解しあわなければ、型だけまねても、良好な関係を作ることは難しいでしょう。

 

■おもてなしを語れますか?

 

「おもてなし」が流行語になってから、「おもてなし経営」や「おもてなし」の教育に力を入れる企業が増えているようです。

 

日本の誇る「おもてなし」も磨かなければ錆つきますから、いいことですね。
そして、今後ますます増える外国人との交流においても「おもてなし」が日本のエスプリとして評価されるのではないでしょうか。

 

かつてフランス企業で働いていたとき、フランスの管理職クラスには、
歴史に対する理解や教養を高く持つ人が非常に多いと感じました。
ビジネスの話から外れて、自国の文化や相手の国への興味を示し、違いを長々と論議することを楽しむのです。
それがリーダーの要件として求められているようでした。

 

さて、皆さんは日本文化や風習のルーツや背景を語ることができますか?
広がる外国人市場、そしてライバルとなる外国企業を相手に
日本の強みをもう一度、振り返っておくのは無駄ではないでしょう。

 

そして、日本について語ること、相手国を知り違いを承認すること、
それが何よりの「おもてなし」になるのではないでしょうか。

 

執筆者プロフィール
川邊 彌生(かわべ やよい)

ビジネスコーチ株式会社 パートナーエグゼクティブコーチ
合同会社オモテナシズム 代表
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

明治大学文学部卒業後、第二精工舎(現セイコーインスツル)入社。経理部に勤務。
その後、キャセイパシフィック航空にCAとして入社。香港をベースに勤務。
同社在職中、トレーニングセンターで英国企業人材開発機関『IPD』会員資格を取得しサービス指導・育成に携わる。

帰国後、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル、エルメスジャポン、シャネル株式会社においてトレーニングマネージャー。2007年イタリア系ラグジュアリーブランド人事部長。
国内外のブランドの理念浸透、富裕層をターゲットとするサービス人材の育成、人事労務施策策定に携わる。
2007年認定プロフェッショナルビジネスコーチ取得。世界的コーチ、マーシャル・ゴールドスミス博士の指導を受ける。

2012年5月彌生教錬有限公司を香港に設立。企業の管理職コーチング、人材開発、女性リーダー育成、「おもてなし」の風土醸成などを主に活動。
2013年11月合同会社オモテナシズムを設立し、「おもてなし」を企業戦略・人事戦略として社会に浸透させる活動を開始。

*セミナー
SMBCコンサルティング
社団法人企業研究会
その他、大学、専門学校において講演

 

■実績
キャセイパシフィック航空在籍時に、CAとしての勤務のみならずトレーニングスクールに所属しサービス向上プログラムを指導する。 同社勤務中、英国のトレーニング資格を取得し、グローバルサービスの設計と実践に貢献した。 日本帰国後は、一貫して、富裕層を対象とする外資系ホテル・リテール業界において人事制度構築・人材開発に取り組む。 多国籍のメンバーが構成するプロジェクトにも参画しグローバルなプログラムの設計に取り組む。 また、経営陣として、企業理念とサービスを実行・定着させ企業価値を高める施策を数多く実践する。
マーシャル・ゴールドスミスにも2008年来日時、指導を受ける。

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