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第34回:21世紀のビジネスリーダーは禅を学べ

吉田 有 吉田 有

ビジネスコーチの吉田です。

 

昨今、ビジネス雑誌などで、「禅」が取り上げられる機会が増えてきました。
私は禅の専門家ではありませんが、これまでの禅との取り組みや、
禅から学んできた考え方がビジネスコーチングを行う上で、大いに役立っていますので、
その考え方の一部をご紹介したいと思います。

 

「禅」は、「しめすへん」に「単」と書きます。その漢字が表す通り、「単純に示す」ことが禅であり、
それはすなわちシンプルにするということです。

   

シンプルにするとは、余計なことを省くということです。
余計なことを省くと本質が見えてきます。
その上で「今、ここ」に全力で集中することで、成果をもたらすものです。

   

皆さんもご存じの通り、アップルのビジネスモデルや製品はとてもシンプルです。
禅の実践者であるスティーブ・ジョブズは、禅を通じシンプル化していく考え方を体得し、
無駄なものを削いで、削いで、削ぎ落し、彼のミッションの実現を通じて、
あのビジネスモデルや製品を作り上げたのではないかと思います。

 

ジョブズはアップル創業から10年目に、自ら招聘したペプシコーラのCEOであったジョン・スカリーに、
アップルを追い出されました。

自分で作った会社を追い出される時、
彼はとてつもない挫折感を味わったのではないかと思います。

しかし、後に彼は
「アップルを追い出された体験があったからこそ、いまの成功がある」
と言っています。
それは「成功者の重圧が、初心者の気楽さに変わった」からだと。
まさに、成功者のプライドを捨てることで「初心」に戻り、自分のミッションが確認でき、
それを全うすることができたからだと思います。

 

現代社会は、あまりも多くのことが絡み合っています。
多くの情報に振り回され、多くの人間関係に悩み、多くのやるべきタスクに四六時中追われています。
そして、それらの課題を解決しようと、多くのスキルを身に付けようとし、身動きの取れない状況になっているように思えます。

 

リーダーの方々も思うようにいかないことに、ストレスをためているのが実情ではないでしょうか。

 

禅的なアプローチとは、それらのものを追い求める中で発生する「こだわり」や「とらわれ」を捨てることで、
「思い通りにはいかないこと」が真実であることと受け容れ、今やるべきことに意識を集中させることです。

 

「捨てる」という言葉から、あきらめる、負けるといったような消極的なイメージがあるかもしれません。
しかし、、この場合の「捨てる」とは、一言でいえば「我(エゴ)」を捨てるということで、
自分にとってより良き「因」を作るための積極的なものです。

 

物事には原因があって、結果があります。
因果応報という言葉があるように、今ある状態は、これまで取ってきた行動や考え方の結果です。

 

よき未来をつくることは、「今、ここ」「今、ここ」の繰り返しのなかでしかないという考えです。

 

言い換えれば、「今、ここ」に、過去も未来もすべてが包含されているということです。

 

「こだわり」や「とらわれ」があると、本来の力を発揮することができなくなります。

 

ソチオリンピックで浅田真央選手が、ショートプログラムで力を発揮できなかったのは、
日本国民の期待を背負いすぎたことも原因でしょう。

 

ショートプログラムからフリープログラムまでの間、相当悩んだことと思います。
そして、「やるっきゃない」と開き直ることができた時、彼女のなかの「こだわり」を捨てることができ、
彼女の本来の滑りができたのではないでしょうか。

 

本来の滑りとは、彼女が「観客と一体」「スケートリンクと一体」、
「コーチと一体」になり、さらには「スケートと一体」となれた状態です。

 

禅に「一体一如」という言葉がありますが、まさにその状態だと思います。
「一体」とは対象物と一つになること、「一如」とは一つになった状態で行動することです。

 

フリーの演技が終わったシーンを何度見ても、我々が感動するのは、浅田選手の演技と我々が一つになっているからです。

 

「一体一如」のイメージは、何かに感動をした場合、その対象物と自分が一つになっているという感覚です。
または、我を忘れて何かに没頭している時、自分がそのことと一つになっているという感覚です。

 

例えば美しい夕陽を見て感動した時、夕陽と自分が一つになっている、
また、コンサートに行って素晴らしい音楽を聴いて感動した時、その演奏者と自分が一つになっているという感覚です。

 

「感動」という字は、感じて動くと書きます。
相手と一つになれたと感じたので、自分のこころが動くのです。

   

この感覚はビジネスの場でも重要です。

 

あなたはチームメンバーと一つになって目標へ向かっているでしょうか?
部下はあなたと一つになって仕事をしているでしょうか?
あなたは、自社の商品やサービスと一体となって営業をしているでしょうか?
あなたはクライアントと一つになって仕事ができているでしょうか?
あなたは、研究テーマと一つになって、研究ができているでしょうか?

 

この問いにYESと答えられない場合、相手にその原因を求めるではなく、自分の我(エゴ)が何かを考え、
それを捨てることが解決のヒントになるかもしれません。

 

「一体一如」の状態で仕事ができた時、持てる力がすべて発揮され、高いパフォーマンスを上げることが可能になるでしょう。

 

しかし、実際に実行するのは難しいものです。なぜなら、形のない心をコントロールしなくてはならないからです。

 

坐禅と取り組むことで、形のないこころを、形を整えることで、コントロールしていくことに役立ちます。

 

それは、次のように行います。
まず、姿勢を整えます。これを調身といいます。
次に、呼吸を整えます。これを調息といいます。
こうすると最後は、こころが整います。これを調心と言います。
すなわち、調身→調息→調心という流れです。

   

坐禅を続けていると、理屈ではなく、体で感覚として、
セルフマネジメントができるようになっていきます。
そして、集中力や直感力も磨かれてきます。

 

昨年12月の日経ビジネスに「禅と経営、一流が実践する仕事の法則」というテーマで15ページにわたる記事が掲載されました。

 

ここでは禅の実践者として、安倍首相、京セラ名誉会長稲盛和夫氏、
アップル創業者スティ-ブ・ジョブズ氏、川上哲治氏などが紹介されており、禅を経営に活かす考え方が記載されています。

 

彼らも皆、座禅と取り組みをして来ました。

 

非常に忙しい彼らがただ座るだけの時間をとることは、たいへん贅沢なことだと思いますが、
価値があるからこそ、あえてその取り組みを続けたのだと思います。

 

私は10年前、20年間経営していた会社をクローズせざるを得ない状況になり、途方に暮れながら、
米国にいる友人トニー・エバンスを訪ねました。

 

そしてトニーから、ある話を聞いて感動した経験があります。

 

アメリカで活躍しているある起業家(アントレプレナー:ロン・ルービンとスチュアート・ゴールド)が、東洋の禅を学び始め注目されている。  そして、Zen(禅) とEntrepreneur (アントレプレナー)を結び付けZentrepreneur®(禅トレプレナー)という言葉を作って、
若き起業家たちに、ビジネスと人生を成功させるために禅を勧めているという話です。

 

米国は狩猟民族型、日本は農耕民族型と簡単に区分けできるものではありませんが、目標達成に邁進しすぎる狩猟民族的なアプローチは、
もっと、もっとと進むことでエンドレスになり、安定感を欠いてしまいます。

 

短期的には巨額の利益を上げることは可能かもしれませんが、創業者がじっくり企業を育てていくことには向いていません。
一方、農耕民族的なアプローチは、一生懸命田畑を耕し、豊作の時はお天道様に感謝し、凶作の時は自らを反省する、
やるべきことはきちんとやるがあとは天に任せる「人事を尽くして天命を待つ」ものです。

 

日本には100年、200年、300年と続いている老舗企業があり、企業を継承していこうという文化があります。
これからの時代は、この双方のマネジメントスタイルが必要なのかもしれません。

ジョブズの言葉に、Journey is the reward、があります。

 

「目的地へ行くことだけが重要ではなく、そこに行く過程にこそ価値がある」
といった意味でしょうか。

 

米国を代表するアントレプレナーであったジョブズが、米国的な成果至上主義とは一線を画するこの発言は、
21世紀のマネジメントのあり方が、 Zentrepreneur®(禅トレプレナー)的マネメジメントになることを予言していると言えるのかもしれません。

そして、我々日本人がそれを実践し、世界へ広げていく使命があるのかもしれません。

 

執筆者プロフィール
吉田 有(よしだ たもつ)

ビジネスコーチ株式会社 取締役
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

日米両国日米両国の経済協力の先駆的ケースである準国策的なパルプ会社に入社し、アラスカ州シトカ市にて勤務。
帰国後、複数の中堅企業の経営を経て、当社の設立に参画。

■実 績
20年間の中堅企業の経営経験を基に、多くの中堅企業、ベンチャー企業の経営者や経営幹部に対して1対1のエグゼクティブコーチングや組織活性化のビジネスコーチングを行い、業績向上に寄与する。40,50代のシニア向けキャリアデザイン研修も行なっている。

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