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第39回:サッカーワールドカップに見るグローバルスタンダードのリーダーシップとは?

久野 正人 久野 正人

いよいよサッカーワールドカップ(WC)も佳境に差し掛かります。
ベスト4が出そろいました。本コラムが掲載される頃は、決勝戦前後かもしれません。
日本代表は予選リーグ敗退、1分け2敗と残念な結果に終わってしまいましたが、
試合のTV観戦、解説者のコメント、メディアの評価などから、今回の敗北の原因、背景と、
今の日本社会が抱えているリーダーシップの課題と共通点があるように思えてなりません。

特に注目が集まったのは、「個人技における世界との差」についてです。
ゴールに向かう突破力とシュートを決める決定力について、日本代表と
世界との力の差が歴然としているというコメントに大いに同感しました。
私は強烈なサッカー通ではありませんが、素人ながらも「明らかな力の差」をハッキリと認識した次第です。

サッカーの目標はゴールを入れること、そして勝つこと。
これはサッカーというゲームの本質ですが、日本代表には(少なくとも相手チームと比較して)その目標に対する執着心、
覚悟のようなものの高さを感じませんでした。
「自分一人でもドリブルで突破するんだ」「どんな体勢からでもシュートを打つんだ」という強い思いを感じないサッカーになっていました。
勿論、ベストを尽くしているのでしょうが、相手チームの主力メンバーが少ないチャンス使って、
個人技で数回のパスで抜き去り、日本ディフェンダーを簡単に躱してゴールするシーンは、
思わず目を覆いたくなってしまいました。

今回のWCを例に取り、企業におけるリーダーシップの視点からポイントを考えてみました。

1.チームワークの前に、先ず個人技あり
  チームに依存する前に個人のスキルを磨くことが大事。
本田選手のコメントもこの一点でした。
仕事のプロになる、お手本の行動をする、知識だけでなく実践する。
これらは、自分一人でできることです。サッカーでいえば、グランドで一人ドリブル、シュート、コーナーキック、
パスの練習を継続的に毎日繰り返し実践する。体で覚え、頭だけの知識だけでなく。
世界最高峰の舞台ワールドカップでは、やはり超一流の個人技が「前提」であり、これはグローバルビジネスにも当てはまります。

2.意思が感じられないパス回し
日本代表は、ゴールに向かって突進する脅威を相手チームに与えることができませんでした。
横のパスを何度繰り返してもゴールに近づけません。 会社では、パス回しは結論出ない会議の繰り返しです。時間の無駄です。
ここぞというシーンで突進するプレーヤーがいないのです。
ポジションだけのリーダー(役職者)がリスクを冒してドリブル突破しなければ、いつかはボールをカットされて得点されるだけ。
企画を練ってばかりで実験、実践に踏み切らなければ、いつの間にか世界の強豪に追い越されている日本企業は多々あります。

3.俺がシュートを決めるという強い主体性、意思ダントツのストライカー不足は、
企業でいえばダントツのリーダーシップを持った役職者がいないのと同じです。
首になる覚悟を持って意思を貫いてゴールに進む強いリーダー不在が、結局は負け試合になることが判明しました。
飛び抜けた人材は日本では疎んじられます。チームワークを乱すという理由で。
しかしながら、勝つか負けるかの真剣勝負では、チームの平均点の勝負ではなく、
特別な人材がいるかいないかで勝敗が決まることを、今回は思い知らされました。

少ない人数ではあるが、彼らが高い個人技とリーダーシップでチームを引っ張っていく、
他のメンバーも彼らをフォローし、リスペクトする。
こんなシナジーが短い時間で生まれ、勝利を導く。
変なカリスマは問題ですが、尊敬されるダントツのリーダー不在の日本企業では、短期間でのシナジーは生まれにくい。
リスクを取るか取らないではなく、リスクとリターンを動物的直観で判断できる人が必要なのです。

4.「何が何でもゴール」という強い執着心、覚悟勝つチームはサッカーを格闘技であると考えています。
多少のイエローカードはルールの範囲内という理解なのでしょう。
ファールギリギリで体をぶつけてくる相手に日本代表は弾かれてボールを奪われていました。
コンプライアンス違反は論外ですが、政治力丸出しの交渉や議論に、
その場で意見を出さない日本人はグローバルでは相手にされないのは自明です。
英語が苦手だとか、プレゼンが苦手だとか、意見が思いつかないとか、
そんなレベルの「綺麗ごと」が通用するグローバル社会ではありません。

5.ゴール、逆転を最後まであきらめないゴールを先に取られたら取り返すというメンタルタフネス。
この点は、日本人が概して弱い点です。個人技と関係しそうですが、
取られても取り返せる余裕がある(個人技があるので何とかなる)かないかという問題のように感じます。
一旦点を取られたら精神的に崩れてしまい、チームワークも急降下するのは、やはり個人の技術、メンタルが弱いからか。
会議やプレゼンで、大衆意見になびく日本人の主体性の無さも同様かもしれません。

6.高いスキルレベルのチームワーク
高いチームワークは一人一人の高い個人スキルの集合知です。
低い個人スキルはいくら多く集めても勝てる集団には残念ながらなりません。
つまり、結局は勝てない。個人個人がチーム内の相手の高い個人技、スキルをリスペクトできる環境、
刺激し合う競争の中で磨かれるチームワークは、甘えと依存が排除された「研ぎ澄まされた」集合知なのでしょう。
チームビルディング研修の前に企業がやるべきことは、
一人一人のカギとなる社員のリーダーシップを研ぎ澄ますことではないでしょうか。
彼ら彼女らが抜群の統率力を発揮することでフォロワーが生まれ、その集合体が強いチームとなるのです。

7.世界レベルは進化していた
「進化するものだけが生き残る」(ダーウィン)は今回のWCでも実証されました。
スペイン、イングランド、イタリア、ポルトガルの予選敗退は何を意味するのでしょうか。
前回優勝のスペインがまさかの敗退。相手はスペインを研究し尽くして、
対策を取り、そして牙をむいて襲い掛かる。相手の進化がスペインを勝っていました。
日本代表は、高いハードルを設定して、WCの準備をしていたのでしょうか。
そのハードルは世界のどの水準であったのでしょうか。

ビジネスパーソンにとっても多くの他流試合が重要です。
社内の競争で勝てても、世の中にはもっとレベルの高い人材が山ほどいることに気づくべきです。
内弁慶は命取りになることを肝に銘じるべきでしょう。
社外に出て、新たな人脈をつくり、切磋琢磨する機会を数多く経験する。
「自分を知る」ことは勝つための一歩かもしれません。

結局は・・・・
「根拠のない勝利は有りうるが、根拠のない負けは有り得ない」。
偶然勝てることは有るが、偶然負けることはない、ということです。負けは必然です。
「会社が変わらなければ、組織が強くなるには」との掛け声は数多く耳にしますが、
会社や組織は個の集合体であることに立ち返りましょう。個が強くなければ強い集合体には成り得ないのです。
弱い細胞60兆で形成する生命体を強くするには強固な免疫性を一つ一つの細胞に持たせるしかありません。

チームワークや和の重要性は同意しますが、それを構成する一個体が強くなければ、敵やビジネスには勝てないのです。
勝ちだけが目的ではない、数字だけが会社のゴールではないという事は、負けたサッカーチームが、
「いい試合だった、ボール保有率やシュート本数が相手を勝っていた、フェアプレイだった」と後から弁解をしているようなもの。
チームの研修は日本の会社が得意とするところですが、個の研修であるビジネスコーチングはグローバル水準には程遠いところにいます。

今回のWCの負けの教訓を企業の幹部や研修担当者が自社のケースに応用し、
社員、特に管理職の個のレベルのチェックをされてはいかがでしょうか。

  • 今の自社の管理職の個人技でビジネスワールドカップは予選通過 できるのか?
  • ベスト8には進めるのか?
  • 優勝はできるのか?
  • 足りない個のスキルは何か?
  • どうしたらそれを加速度的に身に付けることができるのか?
  • 次のワールドカップに向けての戦略はできているのか?
  • 誰がそれをリードすべきなのか?

4年後のロシアでの予選通過、ベスト8進出を願って・・・。

 

執筆者プロフィール
久野 正人(ひさの・まさと)

ビジネスコーチ株式会社 統括パートナーエグゼクティブコーチ
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

慶応義塾大学法学部卒業。古河電気工業株式会社入社後、日本サン・マイクロシステムズ、日本シリコングラフィックスを経て、ベックマン・コールター株式会社入社。
事業部長を経て、代表取締役社長就任。2011年末で同社を退社し、現在は株式会社エム・シー・ジー代表取締役(http://www.mcginc.jp/index.html)BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ。2007年から経済同友会メンバー。
30年間の会社員生活を卒業し、2012年1月からプロのエグゼクティブコーチとして独立。2年半で150名の社長、役員、次世代リーダーへのコーチングの実績を持つ。 社長、CFO、事業部長等の多彩なポジション経験と 日米企業4社(製造業、IT2社、医療・研究)でのグローバル経験(日本企業13年、外資系企業17年、うちブラジル駐在6年) を活かしたコーチングに定評がある。 また30代の逸材育成を目的とした塾(久野塾)の運営で、若手のキャリアアップをサポートしている。 2013年2月から、日本アスペン、フェローズメンバー。 共著書に、『世界基準―8つの動き』(ぜんにちパブリッシング)、『独立成功のカギ』(ミラクルマインド出版)、 監訳書に『リーダーシップ・マスター』(英治出版)がある。

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