資料ダウンロード
  1. TOP>
  2. BCウェブマガジン>
  3. 第40回:企業の品格を養うために~ラグジュアリーブランドに学ぶ懇親会の活用法~

BCウェブマガジン

第40回:企業の品格を養うために~ラグジュアリーブランドに学ぶ懇親会の活用法~

川邊 彌生 川邊 彌生

暑さも本番を迎えました。
皆様の会社でも納涼会や、上半期を終えての社員の懇親会を企画されているのではないかと思います。
社員が気持ちをひとつにして、本音を言い合う機会のノミニケーションを大切に感じていらっしゃる方は、多いのではないでしょうか。

そこで、お尋ねします。

前回と同じ会場、同じメニューで企画していませんか。
経営者の方は、それが会社行事であるならば、その企画を誰かに任せっぱなしにしていませんか。
誰のために、どんな目的で行うものですか。
その懇親会には、他の企業とは違う、あなたの企業ならではの色が出ていますか。

ラグジュアリーブランドに勤務していた時に学んだことのひとつに、
社員にブランドの世界観を伝えようとする徹底した姿勢があります。
退職してから、客観的に見るようになって、このラグジュアリーブランドの世界観が、
茶の湯の「おもてなし」の世界観に通じるところがあることを発見しました。

例えば、社員の懇親会はひとつの良い例でした。
会社として、行うのであれば、そのイメージに相応しい場所にこだわり、選びます。
シャンパンとはまではいかなくても、必ず乾杯はスパークリングです。
ビールではありません。
年に一度の全社員出席のパーティであれば、タキシード着用のようなドレスコードがあります。
売上が厳しく予算が取れない場合は、中途半端に行うよりは、行わないことを選びます。
社内でのケータリングであっても、そのブランドのルーツを表すような
工夫を仕掛けます。

部内での懇親会であれば、女性の好むレストランで行います。

富裕層のお客様と同じ生活が出来るわけではありませんが、
企業として表現している価値観を自分達が守っていることが重要なのです。
そして、お客様が体験しているような場所でどう振る舞うのか、
教育する機会でもあるからです。

あるブランド企業では、経営陣とのワイン会を社内で定期的に行ったことがありました。
一本の高級なワインを数名で少しだけ味わいながら、文化について考える、
一般社員には高級なワインを味わう機会はそうそうありませんから貴重な体験であり、
同時にそれがハイエンドなお客様との会話の糸口にもなる、つまり社員教育の場でもあるのです。

徹底した文化を教え、何が会社として目指しているのか、その美意識を伝えることを意識しています。

懇親会だけではなく、日常においても細部へのこだわりは同じです。
世界観を伝えるという意図は、社内の事務用品や文房具にも徹底されています。

お歳暮にもらったカレンダーやダイアリーではなく、会社が選んだ色の統一された物が毎年配られます。
よその企業名が入った物は原則禁止です。
あるブランドでは、ミネラルウォーターのラベルは、はずした物を使っています。
ほとんどのブランドが、デスクの上に私物は置かない、家族の写真を飾るのも厳禁です。
帰宅時には全ての書類はキャビネットにしまって帰ることが決まりです。
デスクの上で食事をすることも厳禁です。

その他、学校のように細かいオフィスでのルールが定められています。
本社の経営陣が来日する際には、社長自らチェックして回るなど、厳しく徹底させます。
なぜなら、ブランドの世界観が社員にも職場にも徹底されていなくてはならないからです。

この「しつらえ」「ふるまい」「よそおい」が美意識に基づいて徹底されるという点において、
ラグジュアリーブランドのこだわりは、茶の湯の「おもてなし」に似ています。
茶会を催す時の緊張感、ちりひとつなく、その会の主人の趣向を表すための完璧さに通じます。

そして、イタリア人やフランス人は、上に立つ人ほど、徹底した美意識を常に持っていますから、
そのメッセージは強く打ちだされます。
それは社員にとってはある意味緊張感を持たされることでもありますが、いつしかプライドとして植え付けられて行きます。

ところで、一時、品格と言う言葉が流行りました。
しかし、最近の地方自治体で起きたことを考えると、流行語に過ぎなかったのではないかと感じます。

世の中のスピードは速くなる一方で、多くの人材が若いうちに才能を開かせ起業したり、
企業の要となったりするのは歓迎されることですが、品格を育てる時間が間に合わないのではないかと、
かすかに懸念しています。

そしてこの品格は、家庭においても必要ですが、社会人になってからは、
企業において実は、毎日の何気ない細部にこだわることで、備わるように思います。

茶会のようなお客様を迎える際の徹底した「おもてなし」の一方、日本には「無礼講」という言葉があります。
日本人ほど、公の場と、身内の場では、異なる振舞いをする人達は少ないのではないでしょうか。

そして、日本では、身内は家族だけではなく、同じ会社に属する人間は身内です。
だから、会社の懇親会は、無礼講であり、本音で打ち解ける場として機能していると考えれば、それはそれで納得です。

しかし、議会での度を逸した野次も場所を緊張感のない、
身内ばかりの場での出来事という油断があるから起きると考えられないでしょうか。
とすると、宴会の席であれ、日常のデスクであれ、緊張感を持つこと、企業の美意識を伝え、
振舞を教えて行くことは重要なのかも知れないと思います。

また、少し視点を変えて、女性の活用が課題の時代であることを意識して懇親会を考えてみて下さい。

女性社員は、懇親会に出席するにも苦労をしているものです。
子供の保育所への迎えの時間をずらしたり、あるいは子供を預かってもらったり、
家族の食事の用意をしたりと、ほんの数時間遅く帰るために、多くのことを調整して出席しています。

楽しんでいるように振舞っていても、本音で言えば、懇親会に出たくない、と思っている方ももしかするといるかも知れません。
そんな彼女達は、羽目をはずして騒ぐだけでは、貴重な時間を割いた意味を感じていないかも知れません。

しかし、単に関係を深めるだけではない、きちんとした会社の文化を伝える場として捉えると、
彼女達も参加の意義を感じる場になるのかも知れません。
もちろん、ただ笑って楽しむ宴会もそれはそれで必要な時もあるとはしても。

品格のある組織であるために、当たり前のように行っている会社の活動や行事を客観視してみてはいかがでしょうか。

あなたの組織には品格がありますか。

社員の全員をもてなしていますか。

たかが懇親会、されど懇親会、有意義に活用したいものです。

 

執筆者プロフィール
川邊 彌生(かわべ やよい)

ビジネスコーチ株式会社 パートナーエグゼクティブコーチ
合同会社オモテナシズム 代表
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

明治大学文学部卒業後、第二精工舎(現セイコーインスツル)入社。経理部に勤務。
その後、キャセイパシフィック航空にCAとして入社。香港をベースに勤務。
同社在職中、トレーニングセンターで英国企業人材開発機関『IPD』会員資格を取得しサービス指導・育成に携わる。

帰国後、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル、エルメスジャポン、シャネル株式会社においてトレーニングマネージャー。2007年イタリア系ラグジュアリーブランド人事部長。
国内外のブランドの理念浸透、富裕層をターゲットとするサービス人材の育成、人事労務施策策定に携わる。
2007年認定プロフェッショナルビジネスコーチ取得。世界的コーチ、マーシャル・ゴールドスミス博士の指導を受ける。

2012年5月彌生教錬有限公司を香港に設立。企業の管理職コーチング、人材開発、女性リーダー育成、「おもてなし」の風土醸成などを主に活動。
2013年11月合同会社オモテナシズムを設立し、「おもてなし」を企業戦略・人事戦略として社会に浸透させる活動を開始。

*セミナー
SMBCコンサルティング
社団法人企業研究会
その他、大学、専門学校において講演

 

■実績
キャセイパシフィック航空在籍時に、CAとしての勤務のみならずトレーニングスクールに所属しサービス向上プログラムを指導する。 同社勤務中、英国のトレーニング資格を取得し、グローバルサービスの設計と実践に貢献した。 日本帰国後は、一貫して、富裕層を対象とする外資系ホテル・リテール業界において人事制度構築・人材開発に取り組む。 多国籍のメンバーが構成するプロジェクトにも参画しグローバルなプログラムの設計に取り組む。 また、経営陣として、企業理念とサービスを実行・定着させ企業価値を高める施策を数多く実践する。
マーシャル・ゴールドスミスにも2008年来日時、指導を受ける。

BCメルマガ登録を!

最新のイベント情報やホームページでは紹介していない
コーチング・ノウハウなど、役立つ情報をお届けします。