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第49回:「フォロワーシップ」 ― 優れたフォロワーの行動とは? ―

久野 正人 久野 正人

先日、ある企業の部長、課長集合研修でリーダーシップについてセッション を行った。リーダーシップは日本のビジネスパーソンにとって体系的に学ぶ 機会が極めて少ない。

本研修では、ほとんどの参加者がリーダーシップをマネジメントとの 対比で理解し、ある意味で腹落ち度は高かった。しかし、何名かの参加者から、 意外な質問が返ってきた。「リーダーシップについては良く理解できました。 しかし、理解すればするほど、リーダーシップを自分の中で醸成できるか どうか不安が今まで以上に増してきました。私はリーダーをサポートする フォロワーに回りたいという気持ちもあります」と・・・。

我々日本人は伝統的に強いカリスマ性を持った一人のリーダーの登場を 期待し、多くの人が彼(女)をサポートする(フォローする)側に回ろうと する傾向が強い。その方が楽であると思われているし、事実、今までは フォローしておけば、自分自身もリーダーが提供してくれる安定した成果を 享受できていた。

ところが、少人数のリーダーにぶら下がっていれば楽な時代はとっくに 終わっていることに早く気づくべきだ。仮に、リーダーシップを高めていく ことが不得意で、リーダーを支える側に回る立場であっても、単に受け身 ではなく、「主体的に」「自律的に」フォロワーとして行動すべきだ。

つまり、優れたフォロワーシップを発揮することで、リーダーとの関係性も 高まり、チームの成果はリーダー一人が牽引する場合と比べて、はるかに 大きなものが期待できる。実際に、組織のリーダーである社長以外のすべての 部下を持つ管理職には、上司が存在する。部下にはリーダー役を、上司には フォロワー役を演じることが求められる。

では、フォロワーシップとはいかなるものか。 リーダーシップについては、我々は様々なシーンで学ぶ機会があるものの (■参考「リーダーシップとマネジメントの違い」一覧表)、 フォロワーシップを体系的に学ぶ機会は多くない。かくいう私も、体系的に 学んだ記憶は少ない。 「リーダーシップを補完する概念でリーダーを自主的に支えること」 といわれるが、具体的にはどんな言動が優れたフォロワーシップなのか。

世界的企業のCEO、幹部をコーチしているマーシャル・ゴールドスミス 博士の「意思決定者を動かす」(「リーダーシップ・マスター」(英治出版) 第23章)に、「上司を動かすフォロワーとして11の正しい行動」が紹介されて いる。マーシャル博士は、エグゼクティブのコーチであるが、彼のフォロワー の視点が興味深いので、私の補足説明も添えてご紹介する。

「意思決定者を動かすための11の行動」マーシャル・ゴールドスミス博士 括弧内に小職の解説を記載:

  1. 全ての決定はそれを決定する権限のある人によって行われるという「事実」 を受け入れる。~必ずしも、「適切な」「最高に頭がいい」「最良の」人物 によってではない。

    (決定権者は誰であるかを考えて行動することは上司や上役との関係構築 に重要である。上司、上役から可愛がられるというと何だか太鼓持ち的 で優柔不断とも誤解を招きかねないが、歴史の決定は全て意思決定権を 持ったリーダーによってなされてきたという事実を認識する。そうすれ ば、フォロワーとしての自分の言動も自ずと変わってくるものである。 要は素直さや謙虚さがフォロワー側に求められる。)

  2. 意思決定者にアイデアを出す場合、相手には貴方のアイデアを買う「責任」 はない。~だが、貴方には売り込む責任がある。上司が自分のアイデアを 買ってくれないと非難しない。

    (「うちの上司って全然理解がない、自分のアイデアを採用してくれな い・・・」という愚痴や不満は良いフォロワーシップではない。 商売では、あの顧客は買ってくれないとは言わず、どうしたら買って くれるかを考えるはずだ。上司であろうと顧客であろうと、買う側の ニーズや気持ちを考えて提案すれば、あなたのアイデアは採用される 確率は上がってくる。フォロワー側に全責任がある。)

  3. より多くの人々の利益への貢献を考える。~自分や自部門の目的達成だけ でなく、買う側のニーズや組織のより大きなニーズに寄り添う。

    (部分最適ではなく全体最適を考えることで、フォロワーとしての視野が 広がり、リーダーシップ醸成の良き訓練となる。フォロワーであっても 俯瞰的視点と利他の精神を持たなければ成功しない。)

  4. 「ビッグバトル」で勝利を収めるために努力する。~つまらないことに エネルギーと「心理的欲求」を消費しないこと。

    (日常的に、社内のくだらない些細なことに執着して言い争っている光景 は良く目にするものだ。足の引っ張り合いや派閥抗争など、本来の企業 の目的から大きく外れたことにエネルギーを使うことが如何に多いこと か。優れたフォロワーは本来の目的に向かって誠実に粛々と行動する ことに集中する。後から考えるとどうでもいいことを適当に対処して、 効率的に時間を使っている。つまり、生産性が高くなる。)

  5. 貴方のアイデアの現実的な費用対効果分析を提示する。~単に利益がある と売り込むのではなく。

    (目に見えるコストだけでなく時間などのコストも勘案してReturn on Investmentを提案する。ビジネスは最終的には全てB/S P/Lに反映 される。自分の提案を常に数値化してみると、提案内容の甘さに気づく ものだ。優れたフォロワーは、冷静に数値的観点から物事を俯瞰でき、 数字で説得力を持たせる。)

  6. 倫理性や品位をめぐる問題があるときには「異議申し立て」をすべし。 ~倫理違反に対しては決して口を閉ざすべきではない。

    (優れたフォロワーは高い誠実性も兼ね備えている。フォロワーは組織に とって何が一番重要であるかを、フォローする立場から勇気をもって 考え行動できる。高い倫理観を常に訓練している。)

  7. 上司も貴方と同じ人間であることを理解する。~最良のリーダーであって も人間である。私たちは人間以上の神ではない。上司も完璧ではない。 上司が足らない部分は批判するよりも手助けしよう。

    (上司も不足したり弱点もあるという事実を素直に受け入れよう。上司の 粗探しをするのではなく、機転を利かして先回りして上司の補佐役と なれば、フォロワーとして一つ上の仕事をしたことになる。成長の機会 でもある。)

  8. 顧客と同じように意思決定者と接する。~会社と上司をこきおろすこと、 或は同僚をけなすことに時間を費やすな。無礼な態度は損である。

    (優れたフォロワーは対人マナーも優れている。人の悪口を言う暇を つまらない時間と考える。人格者になる努力も惜しまない。)

  9. 組織の最終決定は支持しなければならない。~部下に対して、「上からこう 言われた」という言い方はすべきではない。

    (「上から言われた」は、組織内で日常茶飯事的に最も使われている フレーズである。リーダーとフォロワー、つまり上司と部下の関係で、 上司は部下に「何故そうなのか」を説得力ある表現で伝え、フォロワー である部下がその部下に伝える時も同様にすべきである。つまり、フォ ロワーの部下は、フォロワーをリーダーという眼でみているのだから。)

  10. プラスの変化をもたらそう。~単に「勝利を収める」「適切なことを 進める」では不十分である。他人の過ちばかりに目を向けて、自分たち がどうやって物事を良い方向に持っていくかをあまり考えない。

    (勝利は重要であり、ゴールであるが、勝利しすぎることにこだわること は株主の資金の無駄遣いである。フォロワーとして、自分の行動が組織 にプラスの効果を与えているかどうかについて検証してみると、質の 高い行動に収れんしてくる。)

  11. 未来に焦点を合わせよう。~過去は「手放す」のがいい。明日、何を できるかを考える。

    (過去の出来事の内省は大事だが、内省は未来に向かっての一手を考える ベースである。過去にこだわることで何かは生まれない。フォロワーは 未来志向であるべきだ。)

この様に、マーシャル博士はフォロワーとしてのお手本の11の行動を明確に 示している。我々はどの程度フォロワーとしてのお手本をできているだろうか。 部下を持たない若い時代から、フォロワーとしての行動を高めていくという ことは、優れたリーダーに早く近づくことに他ならない。リーダーシップを ハードルが高いと感じている人も、良きフォロワーで組織に貢献することが 求められている。これに腹落ちできたとき、あなたは優れたリーダーの行動を 始めたことになる。

毎日、フォロワーシップの11の行動を検証してみませんか?リーダーシップ の行動よりも身近に検証できますよ。

 
執筆者プロフィール
久野 正人(ひさの・まさと)

ビジネスコーチ株式会社 統括パートナーエグゼクティブコーチ
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

慶応義塾大学法学部卒業。古河電気工業株式会社入社後、日本サン・マイクロシステムズ、日本シリコングラフィックスを経て、ベックマン・コールター株式会社入社。
事業部長を経て、代表取締役社長就任。2011年末で同社を退社し、現在は株式会社エム・シー・ジー代表取締役(http://www.mcginc.jp/index.html)BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ。2007年から経済同友会メンバー。
30年間の会社員生活を卒業し、2012年1月からプロのエグゼクティブコーチとして独立。2年半で150名の社長、役員、次世代リーダーへのコーチングの実績を持つ。 社長、CFO、事業部長等の多彩なポジション経験と 日米企業4社(製造業、IT2社、医療・研究)でのグローバル経験(日本企業13年、外資系企業17年、うちブラジル駐在6年) を活かしたコーチングに定評がある。 また30代の逸材育成を目的とした塾(久野塾)の運営で、若手のキャリアアップをサポートしている。 2013年2月から、日本アスペン、フェローズメンバー。 共著書に、『世界基準―8つの動き』(ぜんにちパブリッシング)、『独立成功のカギ』(ミラクルマインド出版)、 監訳書に『リーダーシップ・マスター』(英治出版)がある。

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