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第69回:エグゼクティブにとってツラい作業

清原 豪士 清原 豪士

先日、ある女性経営者のクライアントからいただいたコメントから、 洞察を得たものを共有させていただきます。

そのクライアントはおっしゃっていました。
「しかし、人の話を聞くことって、本当にツラいですよね。
 頭も体もヘトヘト。清原さんは、よく毎日やっていますね。」

この方は、コーチングのテーマの一環として、 定期的に社員たちとランチ会を開くことを実践されています。
カジュアルな雰囲気で、社員の皆さんとただ会話を楽しもうという理由です。
ホンネは聞けなかったとしても、社員の顔色、声色、普段に近い温度を感じることは、とても重要なことです。

私のセッションは「ビジネスコーチング」を基本として、だいたいの場合、クライアントからのお話を聴くことに時間をかけます。
いわゆる「傾聴」することが、時間の多くを占めます。

ただ、そんな私でも、 じつは話を聞いていることがしんどくなるケースもあります。
人は基本的に、「話をする」ことの方が自然で、楽しむことができると言われています。
つまり、「話を聞く」だけというのは、自然なものでなく、それだけにツラいことなのです。

では、なぜ「話を聞くことはツラい」のか?
それは、ひとことで言うと、
「聞いている途中で、話したくて仕方ないことがあるのに、 それを我慢しなければならない」からです。

話したくて仕方ないのに、黙っていなければならない・・・

これはツラいです。
どんな人であっても、ほとんどの人には、何かしらの持論があるものです。
そして相手の話を聞いているとき、こんなことを思うことがあるはずです。

「あ。それ、前も聞いた。」

「だから、何が言いたいの?」

「それ、間違ってるから。」

「いやいや、だから私の言いたいのは・・・」

「いつこの話、終わるんだろう。」

「はあ。めんどくさいな。」

「この後のランチ、何食べよう?」

などなど。
無数のことを考えながら、話を聞いているものです。
しかも、そんな聞き方は、人としてむしろ自然だと言えます。

特に経営者にとっては、1分1秒が貴重すぎて、冗長で、要領を得ない話を聞くことはとにかくツラいと感じます。
ところが、自分の話をすることは、なんと気持ちの良いことか。

ところで、私のような仕事をしている者は、どうやってクライアントの話を聞いているのでしょうか。

「自分の考えを捨て切る」

このスイッチを入れて、話を聞いています。

こうでもしないと、つい、
「いや、話はわかりました。それなら、こうしてみたらいかがですか?」
「おっしゃっていることはわかるんですけど、ちょっと効率悪くないですか?私ならこうします。」

など、まるで似非コンサルタントのような調子になってしまいます。
これでは、本来のコーチの存在意義はありません。
私がエグゼクティブコーチとして、クライアントのブレイクスルーを お手伝いしているとき、最も大切にしているのは、
「クライアントがみずから選んだ方法を試す」ための”導き”です。

“導き”と申し上げました。

人は本質的に、人に押し付けられたことをしたくない生き物です。
最終的には自分で選んだ方法を試すことが、 本当に成果につながりやすいのです。

その方法を選ぶに至るまでには、 人にもよりますが、かなりの時間を要します。
そのためのフレームは、導きによく似ていると思うのです。

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考えて、

質問されて、

答えて、

また突っ込まれて、

混乱して、

そこをさらに突っ込まれて、

さらに混乱して、

今度はハッとするような質問をされて、

びっくりして、

答えて、

「あ!」と気づいて、

すぐに試したくなる。

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コーチングのセッションは、原則としてこうした繰り返しです。
ですから、私がその途中で答えに行き当たってしまっても、 それは「捨てます」。

答えが浮かべば、必ず、数秒間は、それに引きずられます。
引きずられているその数秒間、 クライアントの話を聞いていないことになります。

さらにマズいことに、その答えに誘導しようとさえします。
誘導は結果として「押しつけ」です。
これは最もやってはいけない、相手を人として扱っていない行為です。

だから私は、答えが浮かんでも次の瞬間、捨て去ります。
どんどん捨てます。

ただ聞き、好奇心のままに質問し、クライアントの頭の中が グルグルと音を立てて混乱していくのを、観察しています。

カオスから、アイデアは生まれます。

つまり、話を聞くということは「覚悟」がいるということです。

集中力が必要です。
したがって、私の1日のセッションの限界は、4名です。
5名以上は、やはり集中力が続きません。

エグゼクティブにとってはツラい、「人の話を聞く」こと。
しかしそれは、 その経営者の頭の中にはない「びっくりするような答え」を相手が生む、 「助産」のような作業ともなりうるのです。

自分を追い込むことが好きなエグゼクティブなら、わかるはずです。

つまり、

「聞くことは、修行」だと。

 

執筆者プロフィール
清原 豪士(きよはら・つよし)

ビジネスコーチ株式会社 パートナーエグゼクティブコーチ
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
SMBCコンサルティング ビジネスセミナー 講師
ビジネスブレイクスルーKLP講師

大学卒業後、外資系商社、外資系生命保険会社、ベンチャー企業、銀行にて営業、統括、役員など歴任し、2011年4月よりビジネスコーチ株式会社に参画。2015年6月からプロのエグゼクティブ・コーチとして独立。

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