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第72回:コーチ自身が行う「日課の質問」

橋場 剛 橋場 剛

先日1月30日に、「エグゼクティブコーチプログラム」 第1期・第1講が開講されました。

参加人数、総勢38名。

セミナールームは一日中、多士済々のビジネスパーソンの熱気に 包まれました。

本プログラムは、エグゼクティブコーチになるためのプログラムであり、 年齢40歳以上、経営幹部経験を有していることを受講条件としています。

第1講は「エグゼクティブコーチング概論」というテーマで、 いくつかの小テーマについて問題提起を行い、 受講者同士でディスカッションをしていただきながら、 ダイアログ(対話)が重ねられました。

小テーマの1つとして取り上げたのは、

◆「優れたエグゼクティブコーチ」に求められる条件は何か?という実にシンプルな「問い」でした。

第1講の講師を務めていた私は、上記のテーマについて考えるときに重要となる或る4分間の動画を観ていただくことにしました。

その動画とは、弊社のビジネスパートナーであるマーシャル・ゴールドスミス氏が2014年7月1日に日本で講演した際に語った「エゴとプライド」に
ついてのくだりです。 (この部分は示唆に富み、とりわけ個人的に気に入っているパートです。)

動画の詳細は敢えて割愛しますが、要点はこうです。

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<■要点1>
・手術をする際に医師が確認するチェックリストは、とても簡単な質問ばかりである。(例えば、「手を洗いましたか?」等の質問)
ハーバード大学医学部出身のアトゥール・ガワンデ医師が書いた書籍『The Checklist Manifesto ~チェックリスト宣言』によると
医師がチェックリストを確認することにより、不必要な感染症の確率は急激に下がり、感染による死亡率は3分の2にカットされる。

・世界中の病院では看護師が医師に質問することは許されていない。(なぜなら、医師のエゴとプライドが存在するから)

・ガワンデ医師によると外科医のエゴとプライドによって死亡する患者の数は、ベトナム戦争アフガン戦争そしてイラク戦争での戦死者を上回る。

<■要点2>
・アメリカ海軍トレーニング最高責任者の大将(以下「海軍大将」)は、離陸前に若い海兵からいくつかの質問を受ける。

・若い海兵が行う質問は「チェックリスト」からの簡単な質問。(例えば、「燃料はどのくらいあるか?」等の質問)

<■質問>
・エゴが大きい医師は看護師から質問されるのを嫌がるが、海軍大将が質問されるのを嫌がらない理由は何か?
 (↑メルマガ読者の皆様もぜひ上記質問への答えを一緒にお考えください) 

 ※上記質問への解答は、本コラムの最後に記載しています。

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ここには実はいろいろなメッセージが隠されています。

4分間の動画を観ていただいたあと、受講者の皆さんに対して私は1つの質問を投げかけました。

(質問)この4分間の内容から、あなたは何を教訓にすべきだと思いますか?

Aさん:「当事者意識をもつことの重要性」

Bさん:「エゴがもたらすネガティブな影響」

Cさん:「相手を『本気』にさせることの大切さ」等

受講者から次々に活発な意見が出されました。

むろんこの事例から何を教訓として読み取るのかは聞き手(視聴者)の自由なのですが、私がこの動画で最もお伝えしたかった要点の1つは、
「日課の質問」の効用です。

しかも、コーチがクライアントのために行う質問ではなく、「コーチ」が「自分自身」に対して投げかける「日課の質問」です。

「コーチ」が「自分自身」に対して投げかける「日課の質問」は、決して場当たり的なものであってはならず、
それが「コーチ自身」が意図する短期もしくは中長期的な成果につながるものでなければなりません。
前述の医師や海軍大将のように。

別の言い方をすれば、
「コーチ」自身が描くビジョン・ミッションから逆算して導かれる必要行動が「日課の質問」に反映されている必要があります。

もう少し具体的に考えてみましょう。

例えば、私が自分自身に課している10の日課の質問の中の1つに

◆「今日一日、クライアントの課題の本質に意識を向けようとしたか?」という質問があります。

いつでも、どんな状況下においても
私が「クライアントの課題の本質」に冷静に意識を向けられるとすれば、 こうした質問自体は意味をなさないことになります。
前述の医師も、いついかなるときでも100%手術前に手を洗うことができる のであれば、「手を洗いましたか?」といった質問自体が不要となります。
しかし残念ながら、私自身も前述の医師もそうした状況にはないため、 この質問を自身に対する「日課」に組み込んでいます。

私の「日課の質問」を1つの「ケース」として考えると、この質問が設定された背景には例えば、

◆「エグゼクティブコーチング/ビジネスコーチングを企業文化にする

(人材育成・組織開発の「当たり前」にする)」

というビジョンがあります。

企業文化というと少し大げさな感じがしないでもないのですが、エグゼクティブコーチングやビジネスコーチングのアプローチがクライアントの課題の本質に切り込むきっかけを真に提供できるものであるとすれば、結果的にそれらが企業文化となったり、「当たり前」の存在となることも十分可能であると考えています。
(例えて言えば、いまでは会社組織において事業部制やカンパニー制が文字通り「当たり前」のように採用されていますが、少なくとも20世紀初めまでにはそうした事業形態は存在しなかった、ということにも似ています)

エグゼクティブコーチの役割を、誤解を恐れずに表現すれば、「他人を良い意味でコントロール」することですが、言うまでもなく、自分をコントロールできない人間に他人をコントロールすることはできません。

ラグビー日本代表チームの大活躍のおかげで「ルーティン」という言葉が一般にも広く知られるようになりましたが、「日課の質問」はまさしく「ルーティン」を確認するチェック項目であり、かつ、自分をコントロールするシンプルかつ効果的な方法です。

コーチの中にも、「自問自答なら、いつもしているよ」というコーチがいるかもしれませんが、日々自問自答することと、「日課の質問」に答えることは必ずしもイコールではありません。

マーシャル・ゴールドスミス氏は最新刊『トリガー 自分を変えるコーチングの極意』(日本経済新聞出版社)の中で「日課の質問は次のことを思い出させてくれる」と語っています。

■変化は一夜にして起こるものではない

■成功は、日夜繰り返して行うささやかな努力の積み重ねだ

■努力すればよくなる。しなければ、よくならない

コーチはついクライアントに対してどのような質問を投げかけるかに意識が行きがちです。

クライアントに意識を向けると同時に、自分自身がどうあるべきか、クライアントの課題解決のために自身がどのようなコーチであるべきか、については見落としがちです。
この意識自体がコーチのエゴと言えるかもしれません。

優れたコーチが、優れたコーチたりうる基準を1つ上げるとすれば、それはコーチ自身が絶え間ない自己革新へのチャレンジを続けているか、という点です。

そして絶え間ない自己革新へのチャレンジの有無とその度合いを測定する物差しの一つが「コーチ自身が行う『日課の質問』」です。
「日課の質問」というフィルターを通してクライアントはコーチの仕事観、世界観を感じることができ、コーチに対する信頼感や、コーチの言葉に対する説得力を感じることができるのだと思います。

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われわれはエグゼクティブコーチを本気で目指す方々のために、
来たる2月17日18時30分より、エグゼクティブコーチプログラム開講記念イベントとして、以下を開催することに致しました。

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エグゼクティブコーチプログラム開講記念イベント
現役エグゼクティブコーチが語る職業としての「エグゼクティブコーチ」
~エグゼクティブコーチングの課題と今後の可能性~
http://businesscoach.co.jp/service/school/event.html

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エグゼクティブコーチをこれからのご自身の職業とすることを真剣に検討されている方は、ぜひ足をお運びいただければ幸いです。

<※前述の「質問」に対する解答>

手術が失敗したら死ぬのは医師ではなく、「患者」であるが、飛行機が墜落したら死ぬのは「パイロット(海軍大将)自身」であるため。

 

執筆者プロフィール
橋場 剛(はしば ごう)

ビジネスコーチ株式会社 専務取締役
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

アクセンチュア株式会社にて主に大手ハイテク企業に対するコンサルティング業務に携わる。同社マネジャー及び企業経営を経て、当社設立に参画。2010年1月より現職。
大手総合電機メーカーにおけるWeb受注納期回答システムの導入支援、開発購買領域の業務設計・システム化要件定義を実施し、大手企業の業務効率向上を実現する。大企業へのコンサルティング業務の経験を活かし、経営者、マネージャーら50名以上に対してコーチングを実施し、ビジョンの明確化、業績の向上に寄与する。
著書に『優れたリーダーに変わる たった1つの行動』(中経出版)、『ダイエットに成功する人が会社を活性化できるワケ』(扶桑社)がある。

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