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第85回:仕事は楽しいですか?

金澤 信 金澤 信

「楽しく仕事をしていますか?」

私はコーチングや研修の最初の方で、
この質問をクライアントに投げかけることがよくあります。
そして、その後に
「皆さんのメンバーが、楽しく仕事をしているとあなたは思っていますか?」
という質問を投げかけます

第1の質問で「はい」と答える人は2〜3割、
プロフェッショナルファームでも半分程度です。
第2の質問で「はい」と答える人は、更に少なくなります。

中には第1の質問では「いいえ」と答えて、
第2の質問にだけ「はい」答える人もいますが、
概ね第1の質問と第2の質問の両方に「はい」と答えるか、
第1の質問にだけ「はい」と答える人が大半です。

多少控えめな答えをしている面を考慮したとしても、
私はこの現実に疑問を持つとともに大きな危惧を覚えます。

多くの方は自分の会社に無理やり入れられたわけではなく、
何らかの期待や希望を持って自己選択のもとに入社してきたはずです。
それなのに、どうして楽しく仕事ができていないのでしょうか?
その答えの大きな部分を占めるのが職場における人間関係、
特に上司との関係ではないかと思います。

長野県伊那市に伊那食品工業という会社があります。
法政大学の坂本光司教授の「日本でいちばん大切にしたい会社」という本の
第1巻で取り上げられている会社で、日本の90%、世界の60%のシェアを持つ、
世界一の寒天メーカーであるとともに、
現在では総合ゲル化剤メーカーとして成長を続けている企業です。

創業以来、48期連続増収増益を打ち立てた同社の製品は、
食用に限らず、我々が普段接している様々な商品に使用されています。

先日、クライアントの勉強のために久しぶりに訪問し、
5年ぶりに井上社長とお会いして会社を案内していただきました。
早朝に社員が掃除をし、休日には植木の手入れをしているガーデンは、
5年前と変わらず美しく実に爽やかな風が流れていました。

伊那食品工業の社是は
「いい会社をつくりましょう ~たくましく そして やさしく」。

井上社長は
「会社は社員を幸せにするためにある」
「社員が『前より幸せになった』と実感することこそ会社の成長であり、
売上や利益はそのための手段に過ぎない」
「働く社員がイキイキとしている会社がいい会社である」
とお話をされていました。

本社、ガーデンレストラン、工場でお会いしたすべての社員の方々が、
井上社長のお話の通りイキイキとして働いていて、
心から出てくる素敵な笑顔で迎えていただきました。

そんな伊那食品工業でも、中には問題がないわけではありません。
社長は若手社員と直接メールのやり取りを行っていて、
時には「社内で仲の悪い人達がいて雰囲気が良くない」「残業が多い」
「思っていたほどいい会社ではない」といった話が出てくるそうです。

そのような時には、井上社長自らその社員に会ってじっくりと話を聴いて、
「すぐに100%改善できないかもしれないが、一緒に悩む。社員は家族だから。」
と言うそうです。
すると数ヶ月後、それらの社員から「最近、職場の雰囲気が変わった」
「残業が減り、有休も取れるようになった」「誇りを取り戻した」
といったメールが来るそうです。

その間、どのようなアクションがあったかは不明ですが、
社員一人一人を気にかけて社員に寄り添って「いい会社をつくる」という経営理念を、
まさに自身の行動で表していらっしゃると感銘を受けました。

どこの会社にも共通して言えることですが、
すべての社員が自分のやりたい仕事をやれるわけではありません。
あるいは様々な外部要因により、本来ワクワクしてやれるはずの仕事が
そのようにはできない場合もあります。
残念ながら社員のモチベーションに大きな影響が出てしまいがちですが、
そんな時こそ上司の力が試されているのではないでしょうか。

メンバーの心の中までも理解しようとする傾聴の姿勢、
メンバーの思考の枠を広げ、気づきを与える質問の技術、
メンバーに寄り添って自然と発せられる相槌やうなずき。
これらのコーチングのスキルを通して、メンバーの心に火をつけ、
成長意欲を高めることこそが会社の成長に繋がると、
井上社長のお話を伺い確信することができました。

我々は、花を咲かせることはできません。
できることは、きれいに花が咲くための環境を整えてあげることだけです。
咲くか咲かないかは、花そのものの力によるものです。

人財育成も同じなのではないでしょうか。
成長するかどうか、最後はその人の力によるものですが、
上司やリーダーはそのメンバーの性格、能力、行動傾向をよく観察、理解し、
各メンバーに最も適した環境を整えることにベストを尽くすべきだと思います。

花がうまく咲かない時に、
「なぜ咲かないんだ」と花に文句をいう人はいないでしょう。
自分の水のやり方、土の質や量、日の当て方等を反省し、見直すと思います。

人財育成においても同様で、メンバーの成長に問題があるとしたら、
それは上司やリーダーが最適な環境を整えていない、
あるいはメンバーの行動傾向に則したコミュニケーションを
とっていないからなのではないでしょうか?

逆にメンバーの方から見ると、自分の行動傾向や性格、
過去の体験や現在の状況に照らし合わせて、自身の成長に最適な環境、
コミュニケーションのスタイルを上司が整えてくれていないことが、
冒頭で述べた「楽しく仕事ができない」という状況を作り出す
一因になっているのではないでしょうか?
「観察」「傾聴」「質問」「認知・承認」というコーチングの基本スキルは、
メンバーが「気づき」を得て、イキイキと仕事をし、
自分自身をリードしながら成果を出し、
成長するための最適な環境づくりに極めて有効な力を発揮します。

「マネジメント」とは「組織を機能させる」ことです。
メンバーが楽しく成長実感を得ながら仕事をしなければ、組織は機能しません。
少しでも多くのリーダーがコーチングを学んで実践し、自分もメンバーも
楽しく仕事ができる職場づくりに努めていただきたいと思います。

最後に、伊那食品工業の井上社長の言葉を紹介します。
「当社は、社員一人ひとりの成長の総和が会社の成長と定義しています。
社員の犠牲の上に成長する企業などはあり得ません。
社員を不幸にしてしまうような会社なら、なくなった方がいいと考えています。」

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