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第86回:「叱れる」リーダーになる

佐藤 正彦 佐藤 正彦

部下を叱ろうとしても、なかなか上手くいかなかったり、
叱ることに対して苦手意識を持っている管理職の方も多いのではないでしょうか。

最近の若手ビジネスパーソンは、淡泊で仕事にも積極的でないという理由から
「草食系」や「ゆとり世代」と呼称されることも多いようです。
心を鬼にして叱ってみたところ「叱った次の日から会社に来なくなった」
「パワハラを受けたとよからぬ噂を立てられた」などという笑えぬ話もあり、
「褒めて育てる、やる気にさせるコミュニケーションが最も効果的」というのが、
昨今のマネジメントスタイルとなっているところもあるようです。

しかし、実情はそんなに甘くはありません。
リーダーが褒めるだけの安易なマネジメントを実行すると、
意外にも恐ろしい結末が待っていることをご存知でしょうか?

褒めてばかりいると
「もういいや(褒められ飽きた)」
「あの上司は甘いな(嫌なこと言わないから楽だ)」と
部下をダメ社員にしてしまうのです。

人は褒め続けられると、それに慣れてしまい、
「自分の課題や弱点などに気づきにくい体質」になってしまいます。
つまり、むやみに褒めるだけでは決して人は育たないということです。
挙句の果てには自律心のないダメ社員ばかりとなり、
組織を崩壊させてしまうことすらあり得るのです。

コーチングというと、
とにかく相手を褒めることだと勘違いしている人も少なくありません。
叱ることを正しく理解していないとコーチングと叱ることが
対極に位置するものに見えてしまいます。
企業としてコストをかけてコーチングを導入したものの、
管理職が部下を叱れなくなってしまい弱くなってしまったという
これまた笑えぬ話を耳にしたことがあります。
これがもし本当だとしたら悲劇です。
この企業は誤ったトレーニングを受けてしまったのでしょう。

「可愛くば、五つ教えて三つ褒め、二つ叱って良き人とせよ」
という二宮尊徳の言葉があるように、
叱りを伴わない愛は単なる「猫可愛がり」であり部下は良い方向に育ちません。
「叱らない」「叱ることができない」は、
上司として手抜きであると言っても過言ではありません。

リーダーシップを高めるうえで、
正しい考え方と効果的な叱り方のスキルを身につけ、実践していきましょう。

叱る目的は、部下自身に間違った言動を間違っていると認識させ、
自省を促し、行動を改めてもらうためです。
つまり、上司の叱り言葉をきっかけに、〝部下自身が〟自分の問題点に気づき、
自主的に改善の努力をするように仕向けなければなりません。

叱ることはまさしくコーチングであり、その点を実現できてこそ、
叱る効果があったと言えるのです。
そのため、叱る中で期待の言葉や励ましを入れることも重要となり、
間違っても、部下が謝罪をすることを目的に責め立て、
落ち込ませるような叱り方をするべきではありません。

本来、誰でも叱ることは嫌なものです。
叱る側も叱られる側も、良い気分がしません。
しかし、部下が間違った方向に進んでいた場合に、
指摘しないのは真の愛情とは言えません。
常により高いレベルに成長して欲しいという思いを持っているからこそ、
上司は部下のために叱る必要があるということを
肝に銘じておくべきです。

最低限押さえておきたい「叱る」スキルを3つ簡単にご紹介します。

① 部下の言い分を聴きながら叱る
叱る際には、感情と理性の両方で納得を促す必要があります。
反発をさせずに素直な反省を促し、改善の努力をさせるには、
部下の言い分を聴きながら、そのうえで然るべき点を明確に叱ることが重要です。
いたずらに感情的になら(怒ら)ないのは言うまでもありません。

(例) しっかりと○○して欲しい。
どうして~~なのか、理由を教えてくれないか。

② 理由を明確にして叱る
間違った言動を間違っていると認識してもらうためには、
なぜ、叱っているのかという理由を明確にしなければなりません。
それを怠ってしまうと、部下は反発心を持ってしまう危険性があります。

(例) しっかりと○○して欲しい。
なぜなら~~(部下にとってのマイナス点、周囲に及ぼす影響を伝える)。

③ 人格を否定せず、言動を叱る
部下の間違っている点を叱るには、部下の言動に焦点を当てることが鉄則であり、
部下の人格を否定してはいけません。
それをしてしまうと部下は精神的に傷つき、何も受け入れなくなってしまいます。
誰の目にも明らかで客観的な事実を元に叱ることが大切です。

(例)○○をして欲しい(言動を指摘する)
あなたは本来、○○ができる人だと思います。

また、単に叱っただけでは、目的は十分に達成されません。
叱りっぱなしを避け、叱った後に、状況が改善されているかどうかを
しっかりと監督することが重要になります。

慎重に気配りをして叱ったとしても、
叱られた側には多少なりとも悔しさや後味の悪さが残り、
時には自信喪失や管理職への不信感を招くなど、
期待とは逆の方向へ心が動いてしまうこともあります。
「親の心、子知らず」の状態にならないためには、
叱った後の部下の反応と効果を見守ることが大切です。

私が、叱ることに苦手意識を持っていた大手化学メーカーの事業所長に
コーチングをした時の話です。
彼は、責任感が強くとても優秀でしたが、
現場で繰り返し起きてしまうエラーに対して、
職人気質の強い部下たちになかなか改善を促せずに悩んでいました。

コーチングを通して原因を探ったところ、以前ある部下を叱った結果、
部下との関係の質が壊れてしまったことがアンカーとなり、
効果的なマネジメントができていないようでした。

そこで、まずはクライアント自身に叱られた時に「自分がどう感じたか」
(嫌だったこと、良かったこと、その経験が自身にどう影響したかなど)を
思い出して、口に出してもらいました。
「自分自身の経験とつなげること」によって、
本当に実感を持って活用することのできる叱り方の〝コツ〟が
見つかるのではないかと考えたからです。

すると、自分が叱られて嫌だと思った叱り方
=相手を強くとがめ悪い点だけ指摘すること
を、自分も部下に対してしていたことに気づかれました。

次に、「叱る」ということは大事なコミュニケーションであり、
部下の成長を加速させる1つの方法であると捉え、
部下の言い分をとにかく最後まで聴いてみることから始めました。

責め立てるのではなく、事実に対してのみフィードバックを行う、
オープンな質問を交えながら、部下の考えや気づきを促しながら叱る、
そして叱った部下に対しては、必ず期待と励ましを口に出し、
その後のフォローを行うなど、
基本的なコーチングスキルが土台になることを意識して、実践してもらいました。
その結果、クライアントの「叱る」ことへの苦手意識は払拭され、
大いに現場の仕事改善に繋げることができました。

リーダーは時として部下に厳しいことを言わなければなりません。
しかし、ただ言うだけでは効果がありません。
松下幸之助氏は「人として相手の気持ちをおもんぱかる人間観」が
大切であると説いています。

リーダーは、人はどういう時に喜び悲しむのか、
人間理解を深めることが大切なのだと思います。

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