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ビジネスのプロフェッショナルが次世代エグゼクティブをコーチする
第94回:1on1でイノベーションに向かう組織の成功循環モデルを推進させる

久野 正人 久野 正人

前々回のコラムでは、橋場コーチが「1on1の本質」について寄稿致しました。
そこでは、1on1を「個人や組織のありたい姿に向き合う機会」と定義して、
「その目指すところの究極は、その人らしい仕事の仕方をすることで組織の
生産性を劇的に高める」と述べています。

そこで今回は、イノベーションに向かうための組織の成功循環モデル推進に
1on1がどのように活用できるかについて、述べてみたいと思います。

私は1on1を実践する方(上司側)に対しては、
「組織の成功循環モデル」(図表参照)を意識した実践を勧めています。
このモデルはMITのダニエル・キム教授が提唱し、
コーチングの世界ではよく知られた理論です。

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組織の「結果の質」を高めるためには「行動の質」が、
そのためには「思考の質」が重要であり、
「思考の質」は組織の中の「人間関係の質」が決め手になる、という理論です。
そこで、関係の質→思考の質→行動の質→結果の質というグッドサイクルが
とても重要になるわけです。

このモデルに従えば、橋場コーチの言うところの1on1の目的である
「組織の生産性を高める」が「結果の質」であり、
生産性を高める具体的な「行動の質」が必要となり、
その行動に導く「思考の質」を生み出す環境として、
組織における「人間関係の質」が決め手となる、となります。

さらに言えば、これから求められる「生産性向上」は、
インプルーブメント(改善:例えばコスト削減)による生産性向上ではなく、
アウトプットを指数関数的に高める生産性であるべきです。
即ち、イノベーションです。つまりは、各社が求めるのは、
イノベーションを起こすことを目的とした成功循環モデルなのです。

これまでの業績達成、顧客満足度向上、マーケットシェア・アップ等々の
組織の目標達成を結果の質とするだけではこれからのVUCA(*)時代には
勝利できず、求められるのは「イノベーションを起こす」結果の質です。
(*)VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、
Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)

そこを目指すとき、当然ですが、
3つの質(関係、思考、行動)の質の内容も大きく変わってきます。
この内容の違いを意識した1on1を上司側が展開していくべきと考えます。

まず上司がすべきことは、自分のチームの4つの質のレベルチェックを
自ら行ってみることです。自己評価です。
それぞれを100点満点で評価し、現状が何点なのかを把握することです。
例えば結果の質を50点と自己評価した場合、
関係の質、思考の質、行動の質の全てが50点であれば、
バッドサイクルに陥っている可能性があると想定して、
関係の質を検証してみる必要があります。

その場合、コミュニケーションの質の4つの構成要素の観察、質問、傾聴、
認知・承認について、上司がメンバーに自己流でコミュニケーションを
取っていることが考えられます。つまり、上司のスキル不足が原因で、
メンバーが主体的に考えて行動する関係性を作っていないということです。

これは、ほとんどの組織で見られる傾向です。
イノベーションを起こす目的を推進するためには、4つの要素に関する
超一流のスキルを学び、上司としての対話力アップ(短い時間で良質の
コミュニケーションが出来る技術)を高めることが必要です。

また、イノベーションを起こすもう一つの関係の質向上のエンジンは、
メンバーひとり一人が組織の中での自分の役割をしっかり理解して、
それを実践することです。役割とは、ポジションではなく、リーダーシップ、
マネジメント、フォロワーシップです。

リーダーシップは創造と変革、マネジメントは目の前の課題解決、
そしてフォロワーシップは意思決定者の説得と受容ですから、
上司がメンバーに求める役割をメンバーがしっかりと理解して実践できる
心理的状態とスキルレベルに達していることが理想(関係の質が良い状態)です。

また、実際に在り得るケースですが、関係の質が80点と良いにもかかわらず、
思考の質と行動の質が共に50点であれば、あなたのチームの課題は、
思考と行動にあると仮説を立て、その課題を因数分解していき、
素早く実験で検証して、解決していかねばなりません。

上司から言われたことはしっかりと高いレベルで実践できるが、
メンバー自らの力で考え抜いて、それを実践に移すのは苦手。
従って、課題解決は得意であるが新しいことがなかなか起こせない、
イノベーションに向かわない状態です。
上司のスタイルが「指示中心型」になっていて、メンバーの考えを
引き出すことがなく、自発性の芽を摘んでしまっている状態です。

同時に、リスク(本来の語源は勇気を持って試みる)を管理することに
上司が理解不足であることや減点主義の考えに文化になっていたり、
上司の判断力、決断力不足で、仮に、メンバーが良い思考をしても行動に
移せない人が多くいて、残念な結果になっているケースも多々見受けられます。

上記の2つのケースで、仮説→分析→実験→解決の過程で使えるのが1on1です。
メンバーひとり一人がどんな個人的・具体的な課題(個人的な性格、
個人的にやりたいこと、上司や同僚・部下との人間関係、リーダーシップ・
マネジメント・フォロワーシップという役割の理解度と実践できるスキルレベル、
気づきが起きない思考パターン、リスクテイクできない本音等)に
直面しているか、悩んでいるかをまずは上司が観察して耳を傾け、
彼ら彼女らの内なる声を理解することが重要になります。
「個人に向き合う」ということです。

「チーム」とか「組織」とか、集合単位で考えても
机上の議論や解決策ばかりで、具体的且つ実践的なものにはなりません。
1on1でメンバーが何を考えているかを理解する努力をし、問いかけ傾聴し、
しっかりと存在を認め、メンバー毎にパーソナライズした関与の方法を
見つけていきましょう。
VUCA時代にイノベーションを起こしていくとは、
これまでの「おおざっぱ」「曖昧な」スタイルから脱却して、
サイエンス(フレームワークや手法)とアート(向き合う相手の「個」の理解
と関与)の両輪を高いレベルで且つ高速回転で走らせることに尽きます。
1on1は、その一つの突破口となり得る「機会の場」であり、その場を有効に
するためには、組織の成功循環モデルを意識することがとても重要です。

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キーワードは、組織の4つの質の「見える化」と「個人別の関与方法」です。
上司が見ている組織の課題の景色とメンバーに見えている景色は、
同じではないということを前提として、上司がまずは「ぼんやりとした景色」を
俯瞰して4つの質の実態をクリアーに把握し、メンバー個人の業務遂行能力と
意欲の状態を考えた関与の仕方を試みること(状況対応型リーダーシップ)。
即ち、上司とメンバーがお互いの考えを「シンクロ(同期化)」させること。
1on1はそんな機会であり、
イノベーションを起こす原点になり得ると信じています。

       ~組織の成功循環モデル:「これまで」と「これから」の比較例~
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