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第3回:おもてなしを現地化する、まずその前に。

川邊 彌生 川邊 彌生
 ビジネスコーチの川邊弥生です。
 私は、5年前にBCS認定ビジネスコーチの資格を取得しました。
 このコラムでは、日本国内外でサービスを展開する際の人材育成の課題を
 取り上げて行きたいと思います。
 ■第3回:おもてなしを現地化する、まずその前に。
 <香港のおもてなし>
 先日、ある香港企業から、日本の「おもてなし」を学びサービスの質を
 グレードアップしたいとのご相談を受け、訪問することになりました。
 その企業の本社は、最近建築された香港で6番目に高い超高層ビルの
 上層階にありました。
 豪華なエントランスにどきどきしながら受付で名乗ると、素晴らしい
 ハーバービューの会議室に通されました。

 会議室には、大きなスクリーンとPCの設備がそろっており、椅子は革張り、
 ガラスのテーブルはピカピカに光っています。

 緊張しながら腰をかけるやいなや、中年の白い作業服を着た女性(雑用係の
 おばちゃんでしょう)が、ドアを開けて満面の笑みを浮かべながら、
 ガニマタで私に近づいて来ました。
 右手にはマグカップを素手で持ち、私の前に来ると、
 きれいに磨かれたガラスのテーブルにガチャンと置いてくれました。
 マグカップの中には、熱い入れたてのお茶が入っています。

 「唔該(すみません)」。
 「唔使(どうぞ)」。

 これだけの会話ですが、彼女はいかにも楽しそうにうなずいてくれました。
 香港のおばちゃんのこの微笑みには、いつでも和まされます。
 でもなんだか、街中の飲茶に来たような感じがしました。
 そこへ人事部長のLさんが現れました。
 眼鏡をかけ、次々と語る言葉の端々からMBAでしっかりと知識と論理力を
 身につけた女性であることが感じられました。
 彼女は、彼らの会社のサービスはすでに一流であると自負していること、
 しかしながら、さらに業界の枠を超えてリッツ・カールトンの
 サービス基準を目標に努力を重ねていることを熱く語ってくれました。

 つばを飛ばしながら、そしてその間にゲップを2回ほど・・・。

 本当にこの人達が一流のサービスを目指しているのだろうか?
 まずは自分のマナーを見直すほうが先なのでは?
 と私は心の中で思いながら、聞いていました。
 香港をよく知らなかった頃の私であれば、この時点で憤慨して
 「この人達に良いサービスが出来るわけがない」と上から目線で判断し、
 ほんの少し軽蔑していたかも知れません。
 ところが、香港に長く住むと、これは失礼でもなんでもなく、
 ごく当たり前の光景であることが理解できるようになります。
 ガニマタで歩いても、お茶をガチャンと置いても、熱いお茶をにっこり
 とした表情で出す、それが香港のおもてなしです。

 人前でゲップをするのが失礼だなんて、香港のマナーブックには
 ないのです。

 とはいえ、香港でもグローバル企業には、やはり洗練されたサービスが
 求められます。

 香港人がますます世界で認められるには、気づかなくてはならないことが
 まだたくさんありそうです。

 <香港にあって日本にないもの>
 人事部長のLさんからの私へリクエストは次のようなものでした。
 日本のサービスは洗練されていて、思いやる心が示されていて心地よい。

 どうしたら私達もそのサービスが実践できるのか、
 私達に気づきを与えて欲しい。

 ただし、私達は日本人じゃない。
 私達のスタッフの教育レベルは高くはないし、一般の香港人は気取った
 マナーなど知らない。
 私達にあるのは、とても明るく元気があり、エネルギッシュで生き生き
 としたスタッフの魅力である。
 彼女達のその良さを尊重して欲しい。
 
 香港の魅力が引き立つ、香港人ならではの究極のおもてなしの実現を
 支援して欲しい。
 このリクエストを聞いた瞬間、私の情熱が掻き立てられました。
 元気でエネルギッシュで生き生きとした人達。
 それこそアジアの魅力です。
 私が香港を好きな理由です。
 なんて素敵な人事部長でしょう。

 自分達に欠けているところを良さと認識しながらも、他の国を見習いたい
 という謙虚な姿勢と社員への愛情あふれる表現に、この会社の可能性を
 感じました。

 <その国の価値観を承認する>
 世界が認める日本の「おもてなし」も急速にグローバリゼーションが
 進んでいます。
 
 海外進出の際のひとつの武器として「おもてなし」を現地で実践しよう
 とする企業は増えています。

 また、日本以外の国の企業が、日本の「おもてなし」を取り入れようと
 しています。

 あなたの会社では、マニュアルを作る前に、またマナー研修を行う前に、
 相手の国の価値観を理解し、承認するプロセスを持っているでしょうか。
 相手の気持ちを察し、その動きに合わせるのが日本の「おもてなし」です。

 「おもてなし」を現地化するには、まずパートナーである国を
 理解すること、その国の「おもてなし」を承認することから
 始めてはいかがでしょうか。

 次回は、外国人から見た日本人について、ご一緒に考えたいと思います
 (11月掲載予定)。

 

執筆者プロフィール
川邊 彌生(かわべ やよい)

亜細亜商務教練有限公司 総経理
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
明治大学文学部卒業後、セイコーインスツル株式会社に入社。
その後キャセイパシフィック航空にCAとして入社し、11年間、香港で勤務。
帰国後、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルにおいてトレーニングマネージャー就任。
その後、エルメスジャポン株式会社の人事教育マネージャー、シャネル株式会社においてトレーニング部部長として勤務。
2007年イタリアのファッションブランドにおいて人事部長就任。
2012年同社を退職し、6月より現職。

■実績
キャセイパシフィック航空在籍時に、CAとしての勤務のみならずトレーニングスクールに所属しサービス向上プログラムを指導する。
同社勤務中、英国のトレーニング資格を取得し、グローバルサービスの設計と実践に貢献した。
日本帰国後は、一貫して、富裕層を対象とする外資系ホテル・リテール業界において人事制度構築・人材開発に取り組む。
多国籍のメンバーが構成するプロジェクトにも参画しグローバルなプログラムの設計に取り組む。
また、経営陣として、企業理念とサービスを実行・定着させ企業価値を高める施策を数多く実践する。
マーシャル・ゴールドスミスにも2008年来日時、指導を受ける。

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