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ビジネスのプロフェッショナルが次世代エグゼクティブをコーチする
第102回: 強い人材、組織をつくる要諦 ~スポーツに学ぶ~

佐藤 正彦 佐藤 正彦

2020年の東京オリンピックを2年後に控え、
今年はスポーツ界の不祥事が次々とテレビのワイドショーを賑わせました。
今まで潜在化していたスポーツ界の問題が、一挙に表面化した感があります。

私はビジネスにおけるエグゼクティブコーチですが、
一般社団法人スポーツコーチング協会認定の
スポーツコミュニケーションアドバイザー&コーチでもあります。
そこで今回は、人材育成におけるビジネスとスポーツの世界の共通点や
気づきについてご紹介します。

そもそも、わが国のスポーツ界では、軍隊的な厳しい鍛錬を通して、
理不尽な命令にも従う従順性を選手に刷り込んできました。
監督・コーチや先輩の指示命令は絶対的で、
選手が口にすることは「はい」「わかりました」「すみません」の三言だけ。
じゃあ、あなたは本当に理解しているのかと聞いてみると、
本人は何も理解していないということが結構起きていました。
誤解を恐れずに申し上げると、多くの場合、選手は『考える』ということを
放棄させられていたのです。ですから、一部の選手を除き主体性(自分で考え、
行動すること)がほとんど養われていないという実態がありました。

しかし、就職面において体育会系の学生は、主に嫌なことでも素直にやる
という理由で、大手企業の人事部から今でも人気があるといいます。
但し、それも概ね30歳位までで、その後、管理職やインテリジェンスの必要な
仕事に就くと体育会系は使えない・・・という声が聞こえてくるのも事実です。
学生時代、折角スポーツで心技体を鍛えてきたのに、
『考える力』が養われなかったために、社会に出てもリーダーシップや
クリエイティビティを発揮できない人も少なくないのです。
因みに、自分も体育会出身ですのでよくわかります(笑)

そんなスポーツ界でも、指導者やチームに変化の兆しが表れています。
全国大学ラグビー選手権9連覇中の帝京大学ラグビー部や
箱根駅伝4連覇中の青山学院大学陸上部などはその代表例といえます。
スポーツ社会でも目上の人に敬意を払うことは絶対に必要です。
しかし、最終的に戦うのは選手ですから、本来は彼ら自身が自覚と意識を
高く持って戦える指導をしていかなければいけません。

両大学の監督(帝京大:岩出雅之氏、青学大:原晋氏)の指導に共通して
いるのは、コミュニケーションの向上と選手自ら『考える』環境を整え、
主体性や自律性を養っていることに他なりません。

たとえば、帝京大学では上級生は原則下級生にラグビーを教えません。
上級生は下級生に質問しかしません。
単なるティーチングではなく、むしろコーチングをしています。
練習中でも何かポイントを感じると、すぐに近くの3人が集まってトーク
(数分間のミニ・ミーティング)をします。
その際も上級生は下級生に質問をして考えさせます。今のプレーに対する
目的や改善点などを質問によって気づかせ、思考と行動の質を高めています。

堀越康介選手(帝京大学ラグビー部主将・現在トップリーグサントリー
サンゴリアスに所属)に次のような話を聴く機会がありました。

「上級生たちは下級生たちにどのような質問をしたら効果的かを検討する
ミーティングを、定期的に行っています。
ラグビーの試合中は、監督もコーチも観客席で観ているだけで、
グラウンドにおりて選手に指示を出すことができません。
どんな展開になろうとも、選手たちは自分たちで考え、素早く行動し、
事態を打開しなければやられてしまいます(略)」

スポーツにおいて勿論フィジカルは重要な要素ですが、
現代はそれだけでは勝てません。心技体+インテリジェンスが必要です。
ここでいうインテリジェンスとは、『考える力』です。
考えるとは、物事の真理を知り、答えを自ら導き出し判断することです。

スポーツをやってきた人で、
心技体+インテリジェンス+コミュニケーション力+人間関係構築力
を備えた人は、間違いなく社会で活躍できる可能性が高いといえるでしょう。
常勝帝京大学ラグビー部の強さの片鱗を感じました。
 
もうひとつ、スポーツにおける最近のトピックスがあります。
先月(9月)上旬に行われた日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯で
原江里菜プロのキャディである清水重憲氏は、
「今の素振りは本当に打つ時の素振り?」
手にした番手についても「それで何ヤードキャリーが出ると思う?」など
原選手いわく「質問攻め」のラウンドを続けたそうです。

原選手はこの一つひとつの問いかけによって、
「整理ができた」と的確なプレーを連発し大健闘しました。
おそらく清水キャディの効果的な質問によって、
原選手の記憶のライブラリーに上手くいくイメージが蓄積され、意識も
身体(筋肉)も前向きになることでポテンシャルが最大化されたのでしょう。
『問いの質』によって『思考、行動、結果の質』も変わるのです。

スポーツとビジネスの世界は驚くほど共通点やヒントが多くあります。
「VUCA」といわれる現代、いちいち他人の指示を仰がないと動けないようでは、
ビジネスの変化のスピードや幅に対応できません。
リーダー(指導者)からの指示命令をメンバーが忠実にこなす旧来型の組織では、
メンバーの成長に限界があるのです。周りが凄い勢いで変化しているのに、
社内におけるコミュニケーションやマネジメントのあり方が昭和の時代のまま
旧態依然としていたら、齟齬が生じるのは当然です。

米国シリコンバレーでは当たり前ですが、
最近わが国でも、1on1ミーティング(上司と部下による1対1の定期的な対話の
時間)を導入する企業が増えてきました。
上司は、「部下のための時間」だからと、特別肩に力を入れて構える必要はなく、
まずは部下とのコミュニケーションの量を増やすことによって、
信頼関係をつくり(リメイクし)、部下の不安を解消するところからスタートします。
そして、「傾聴」によって相互理解を深め、「承認」によって部下のモチベーションを高めます。
さらに「質問やフィードバック」を通して、部下が「学びや気づき」を獲得して、新たな行動や
チャレンジに繋げられるよう支援します。
有効な問いが部下の脳に残れば、主体性に繋がります。

シンプルに言えば、たったこれだけのことを実行するだけで、部下の主体性や
自律性が養えます。そして、成果を最大化するための『組織の成功循環モデル』が
スパイラルアップするのです。

組織やチームが『考える集団』になれるかどうかは、トップやリーダーの
信念と忍耐強さにかかっているといっても過言ではありません。

「教育とは、事実を教えることではない。考える力を養うことである」
アルバート・アインシュタイン

「人にものを教えることはできない。自ら気づく手助けができるだけだ」
ガリレオ・ガリレイ

※参考資料
●『常勝集団のプリンシプル 
自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント』
(岩出雅之 著、日経BP社)
●『これを6年間やったボミはすごい!
好発進の原江里菜が語る清水重憲キャディの〝効果〟』
(間宮輝憲 文、Yahooニュース 18/9/6配信)

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