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第31回:「五省(ごせい)」―海軍兵学校に見る「真の」リーダーの創り方から学ぶ―

久野 正人 久野 正人

一、至誠(しせい)に悖(もと)る勿(な)かりしか真心に反する点はなかったか?

一、言行(げんこう)に恥(は)づる勿(な)かりしか言行不一致な点はなかったか?

一、気力(きりょく)に缺(か)くる勿(な)かりしか精神力は十分であったか?

一、努力(どりょく)に憾(うら)み勿(な)かりしか十分に努力したか?

一、不精(ぶしょう)に亘(わた)る勿(な)かりしか最後まで十分に取り組んだか?

「省」は「かえりみる」で内省を意味します。
「内省を通して示唆を得る」ことは「心の経済活動」であると、世界的な経済戦略家ゲイリー・ハメルの言葉です。
「深く自己を見つめ、人として至らない点はないか」と厳粛に考える心のはたらきです。

 

「五省」は旧海軍で将校生徒の教育を行っていた当時のスーパーエリート養成校である江田島海軍兵学校において
使用されていたもので、いわば「自戒のことば」です。
当時の超エリート集団であった海軍兵学校では、毎晩、就寝前に生徒は瞑想し、
心の中でその問いに答えながらその日一日の自分の行動について内省をしていたという事実を最近知る機会に恵まれました。

 

私のとあるクライアント企業(オーナー企業)の会長は84歳ながら矍鑠(かくしゃく)とされています。
先般、創業40周年記念パーティーでも、
日本語のスピーチの後に外国人招待客向けに10分間程度の英語のスピーチを原稿を見ずにされていました。

   

この方こそ、最後の兵学校生徒で、その後ハーバード大学まで留学された、まさに当時のエリート中のエリート。
私が、五省を知るきっかけとなったのは、同社のクレド(信条)として、会長の直筆の「五省」の額を会議室で拝見したことでした。
同社では一流の社員となる心構え、そして人としての品格を備えるための信条を「五省」に表しているのです。

 

「五省」の内容は哲学的な意味を持っており、国や時代が変わっても、人の倫理的な生き方を求めるものです。
5つの問いは自分に対するもので、兵学校の生徒が就寝の前に一日の行動を深く振り返ることで、人格的のみならず行動の面でも、
最高レベルのエリートを創るプロセスでした。

   

このプロセスは、リーダーになる(既にリーダーである)人には(も)極めて重要です。
今日一日を振り返ることで、明日、もっと意義ある日にする、人間らしく、正しく、
誠実に生きることができるためにどうすればよいかを考えることに繋がっていきます。
そして、考えた行動を実践することで、新たな発見や気付きが起き、先を予測して自らを成長させることができます。

 

「真のリーダー」とは、このPDCAサイクルを毎日の習慣として実践できている人であり、
超一流のアスリートの強い「精神力」と呼ばれるものと本質が同じものかもしれません。

 

私のコーチング対象者であるエグゼクティブの殆ど全ての人の抱える課題の本質は、
多忙すぎて考える時間がないことに由来します。部下との対話の時間がない、質問する代わりに自説をまくし立てる、
指示しすぎる、傾聴できない、部下の話にかぶせて発言する、短気で怒りっぽい、権限移譲できない等の課題の多くは、
エグゼクティブが自ら考え、省みる時間が一日の中に殆どないことが原因であると確信できます。

 

まずは、「MY五省」を作ってみましょう。そして、実践してみましょう。

 

毎日就寝前にチェックするのにかかる時間は5分程度、毎日の5分の積み重ねが、
組織の課題解決のトリガーになっていくとは思えないかもしれませんが、コンサルタントに組織の課題解決の依頼をしたところで、
考えることができないリーダーとその組織にとっては、コンサル料も無駄な投資に終わってしまうことでしょう。

 

五省はゼロ・コストです。MY五省を作り、そして試み、次第にそのハードルを上げていくことこそ、
アスリートが目標のスコア、タイムを高めて挑戦していくことのビジネス版です。

 

組織のリーダーは組織の運命を握っているのです。組織の一流のリーダーになるためには、
一流アスリート並みの自省と毎日の鍛錬が求められるということも、ごく自然な考えです。

 

因みに、その会長曰く、兵学校では、五省について教官が生徒に「本当にそうか?」と尋ね、
生徒が「ハイ」と応えると、「そんなことはない!」といって殴られたのだとか・・・

 

これは、「貴様の五省のハードルはそんなに低いレベルなのか!」
という意味だそうで、当時のスーパーエリートには自らにより高いエリートの意識と行動が求められることで、
「真のリーダー」が創られていったのだということに想いを馳せ、私自身は、コーチとしての五省を毎日粛々と実践する辛さと戦っています。
「紺屋の白袴」にはなりたくないですからね。

 

執筆者プロフィール
久野 正人(ひさの・まさと)

ビジネスコーチ株式会社 統括パートナーエグゼクティブコーチ
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

慶応義塾大学法学部卒業。古河電気工業株式会社入社後、日本サン・マイクロシステムズ、日本シリコングラフィックスを経て、ベックマン・コールター株式会社入社。
事業部長を経て、代表取締役社長就任。2011年末で同社を退社し、現在は株式会社エム・シー・ジー代表取締役(http://www.mcginc.jp/index.html)BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ。2007年から経済同友会メンバー。
30年間の会社員生活を卒業し、2012年1月からプロのエグゼクティブコーチとして独立。2年半で150名の社長、役員、次世代リーダーへのコーチングの実績を持つ。 社長、CFO、事業部長等の多彩なポジション経験と 日米企業4社(製造業、IT2社、医療・研究)でのグローバル経験(日本企業13年、外資系企業17年、うちブラジル駐在6年) を活かしたコーチングに定評がある。 また30代の逸材育成を目的とした塾(久野塾)の運営で、若手のキャリアアップをサポートしている。 2013年2月から、日本アスペン、フェローズメンバー。 共著書に、『世界基準―8つの動き』(ぜんにちパブリッシング)、『独立成功のカギ』(ミラクルマインド出版)、 監訳書に『リーダーシップ・マスター』(英治出版)がある。

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