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第56回:憧れの君 (女ひと)の『真の心』を尋ねなかった!

加地 照子 加地 照子
1.憧れの女性管理職とのひととき

私が勤務していた航空会社では、 Tという全女性社員の憧れの女性管理職が活躍していました。
広報部の課長でもあり、小柄ながらきびきびした動き、明確な言葉遣い、そしてオードリー・ヘプバーンにも似た魅力的な風貌で、常に男女に関わらず注目の人でした。

彼女は日本で最初の映画女優となった花柳はるみ(本名:糟谷いし)を母に持ち、常滑の廻船問屋の娘でもありました。

現場第一線で働く若手女性スタッフの多くが、ぜひ一度T課長に会いたい、お話をしたいと望んでいました。
しかし、彼女は女性だけの会合には参加しかねるという強い意志を持っており、その願いが叶うことはないと思っていました。
それが、ある日、男性上司の力添えを得て、10名ほどの同期女性がT課長とディナーを共にできることになったのです。

夜の食事の場でもあり、仲間たちの会話は弾んでいましたが、ふと彼女を見ると、押し黙っていたのです。

何か悪いことをし、ご機嫌を損ねてしまったのだろうかと、冷や汗が出ました。

もし、私がすでにビジネスパーソンコーチングを学んでいたら、あのようなひと時は起こり得なかったと思います。

「どんな夢をお持ちなのでしょうか?」
「後進の女性たちには何を望んでいらっしゃるのでしょうか?」
「私達が応援できることはどんなことでしょうか?」
「男女の違いは、何だと思われますか?」
「キャリアを積むには、何を優先すればよいのでしょうか?」

しかし、当時の私は、適切に聴く・尋ねることによってメンバーの成長が図れる貴重な機会を逸してしまったのです。

T課長はその後、次長、初の女性部長、初の女性理事というキャリアを辿り、国土交通省の運輸委員会審議委員として公的な職務にも就かれました。

私は、国際業務室で法学を専門とする彼女と同じ職場となり、日航財団(現JAL財団)では、常務理事であった彼女の直属の部下となり再度の縁を得ました。
「世界の若者やこどもを“地球人”に育成する」という夢に向かったのです。

薄化粧で、大切な方からのプレゼントだからと、いつも真珠のイアリングと指輪をはめ、襟元には宝石で細工された様々なブローチを付けていました。

オペラ、能、バレエ、演劇、演奏会、絵画展などに足を運ぶことを怠らず、また読書の量、人脈の多様性と深さは他に類を見ませんでした。

昼食は社内外トップとの会食が入らなければ、いつも私達部下と共にし、業務はもとより政治・経済・芸術と多岐にわたる会話を相互交流方式で進めたのです。

誰かの誕生日や良いことがあれば、ワインを1本オーダーし、皆に振舞いました。しかもさりげなく。

出される礼状は、愛らしく美しいカードに、丸文字っぽい読みやすい字で、心からの感謝の気持ちが簡潔に記されていました。

常に「与える」で満ち溢れた人!

彼女の名は“瀧田あゆち”。
自他ともに認める「日本でのキャリアーウーマン」の先駆けです。

2.21世紀のリーダーに重なる行動スタイル

ロバート・グリーンリーフは、著書「サーバント・リーダーシップ」で「フォロワーが自らの意思で応ずるのは、サーバントであると証明され、信頼されていることを根拠に、リーダーとして選ばれた人に対してだけだろう」と述べています。(注1)

またクレイトン・クリステンセンは、21世紀に破壊的イノベーションをもたらしたトップリーダー達は
①観察する力、②繋げる力、③質問する力、④ネットワーク構築の力、そして⑤実験する力をもっていると明らかにしています。(注2) 

さらに宇宙飛行士の野口聡一氏は、『宇宙プロジェクトでのリーダーシップ、フォロワーシップ講演』の中で、「チームを束ねる人間力では、
①対人性、②行動性、③態度(冷静さ、ポジティブ、謙虚) が重要となる。
・・・さまざまな背景の人たちをうまくまとめていくためには、日本流の気配りや和の精神を重んじながら、大胆に会議を運営していかなければならない。」 と述べています。(注3)

瀧田氏は、私が女性活躍推進全社的プロジェクトのリーダーを務めていた折りに、電話で私の行動について忠告してくれました。すぐ彼女の事務所に出向いた私に、静かな諭す風情で、決して押しつけがましくなく、助言を与えてくれました。

私の経験からいえば、瀧田氏は既にサーバント・リーダーのモデルとも言える人物であったと思います。

3.女性の存在価値と特性を活かす

女性であることを主張するのは拒否しながらも、有り余る女性らしさを日々の行動の流れの中で発揮した人。
能力とは個性によると考えながら、優雅さを失わず、凛とした態度で全てに臨み、老若男女を問わず周りに惹きつけた人。

いわば「宝石」のようなリーダーシップを発揮した人。
それが瀧田あゆち氏であり、今なお「モデル」となる人材であることを今更のように感じています。

かような人物に触れる機会を持てた自分の幸せを認識しています。

レーダー型の女性は、レーザー型の男性(注4)に比べ、出産・育児・介護の経験を始め、より多様な人生を享受できると思います。

世の中には素晴らしいリーダーが数多く活躍しています。
その中で、もし瀧田氏のような女性の先達が身近にいらっしゃるなら、ぜひ観察し、その宝に気づき、できれば直接触れ、尋ねる機会を持って欲しいと思います。

そして自己の魅力(強み)との共通性を探し、自己に応用できるかチャレンジし、そのDNAを引き継いでいって欲しいと私は強く思っています。

【参考文献】
注1.ロバート・K・グリーンリーフ著/金井壽宏監訳/金井真弓訳 2008
「サーバントリーダーシップ」英治出版
注2.クレイトン・クリステンセン、ジェフリー・ダイアー、ハル・グレガーセン著/櫻井祐子訳 2003
「イノベーションのDNA」 翔泳社
注3.日本経済団体連合会 2015.3.12 
「週刊 経団連タイムス 第3215号」日経連事業サービス
注4.サリー・ヘルゲセン著「女性のリーダーシップを伸ばす」、
マーシャル・ゴールドスミス&ローレンス・S・ライアンズ編著/久野正人監訳/中村安子・夏井幸子訳 2012
『リーダーシップ・マスター』英治出版

 

執筆者プロフィール
加地 照子(かち てるこ)

東京外国語大学フランス語科卒
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
ビジネスコーチ株式会社パートナーエグゼクティブコーチ
世界ビジネスコーチ協会(WABC)正会員
日本航空株式会社、ジャルパック、日航財団、21世紀職業財団に勤務後独立
ホスピタリティ・マネジメント学論にて修士号
クライシスマネジメント協議会理事、日本ホスピタリティ・マネジメント学会理事

■実績
【人材育成に早期より関わっている】
日本航空入社後、初代女性海外実習生としてパリ勤務、のち欧州各国航空会社と協定交渉、営業所長を経て中近東クウェート駐在。本社管理職として世界各国社員の人材育成企画・訓練に従事。女性活躍推進の全社的新規プロジェクトを担当。日航財団広報担当部長および研究開発センター主任研究員となる。
2003年21世紀職業財団の東京事務所長のち本部事業部担当部長となり、日航での現場・政策両分野の経験を生かし、リーディング諸企業の人財多様性経営や女性活躍推進の実行支援に集中する。2010年独立。
【ホスピタリティ・リーダーシップ・コーチングを独自に提唱し実践している】
「グローバルに活躍する女性幹部を育成する」をビジョンとし、2011年にプロのビジネスコーチ、2012年に世界ビジネスコーチ協会正会員となる。企業・行政・大学より要請を受け研修指導。役員・基幹管理職を中心としたOne to One Coachingを実践。

■書籍
直近では「ホスピタリティとリーダーシップの相関性に係る一考察」:2012
『ホスピタリティ』第19号(日本ホスピタリティ・マネジメント学会刊行)

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