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第60回:人事は多様性の海へ

【HR】吉田 寿 【HR】吉田 寿

■ 3期30年にわたる人事制度改革

人事の世界にも、「流行り・廃り」というものがあります。
私が人事分野のコンサルティングに携わるようになってから既に四半世紀が 経過しました。
この間、こと人事の分野に限っても、時代の流れに応じて、 コンサルティングのテーマはずいぶんと変遷を遂げてきました。

過去の流れをざっと振り返ると、それは3期30年にわたる壮大な 人事制度改革の実験の歴史と位置づけることもできます。
それは、およそ以下のような流れです。

第1期(1990年代):脱年功主義人事制度改革への変革期
第2期(2000年代):成果主義人事制度改革の浸透と迷走期
第3期(2010年代):ダイバーシティ・マネジメントへの転換期

日本企業の人事制度改革は、 バブル経済が崩壊した1990年代に本格化します。
それまでは、いわゆる「年功型人事制度」が主流でした。
しかし、それまでの成長経済を前提として右肩上がりで総額人件費が 増えてしまう人事の仕組みでは、もはや限界が見えていました。

そこで、「コンピテンシー」や「パフォーマンス・マネジメント」に 代表される、アングロ・サクソン流の人材マネジメント手法が積極的に 導入されたのです。

それが2000年代に入ると、人事制度のコンセプトは「成果主義」に集約され、多くの日本企業は、こぞって成果主義人事制度の導入に走ったのです。
経営のトレンドは、個社単体の人事からグループ全体に視野を広げた人事の あり方を模索するようになりました。

一方で、「成果主義の失敗」や「成果主義の迷走」といった言葉が 飛び交ったように、不慣れな成果主義人事の運用面での課題が浮き彫りに なった時代でもありました。

そして2010年代に入ると、 まず話題に上ったのは「グローバル人材の育成」です。

人口減少と超高齢社会の到来に伴い、 国内市場の縮小傾向が顕著になってくると、「あなたは世界で闘えますか?」 の問いかけとともに、グローバル人材の育成が産官学を挙げた喫緊の課題と 位置づけられるようになりました。

 

■現在のトレンドは「女性」と「高齢者」
2010年代も半ばを経験すると、このトレンドが単なる企業の グローバル対応では終わらなくなってきています。

最近、いろいろな企業の人事担当者に話を聞くと、彼らの目下の課題は、 グローバルに加えて「女性活躍推進」と「高齢者処遇」にほぼ集約される ようになりました。

この「グローバル」、「女性」、「高齢者」などのキーワードをまとめると 「ダイバーシティ・マネジメント」(多様性を活かす経営)に行き着きます。

現状のところ、政府方針との関わりで、 女性活躍推進が最優先で取り扱われているようにも思えますが、 同じ組織の中でも、様々な人種や職種、雇用区分、 就労条件や年齢・世代の違いを超えて、それぞれの立場を尊重しながら、 ともに協働できる場づくりが重要となってきています。

「多様性は力」(”Diversity is strength.”)なのです。

 

■そして多様性の海へ
最近、科学技術が未来の職場に与える影響に関して、 「AI(人工知能)の進歩でなくなる仕事」が注目を集めています。
きっかけは、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の論文 「雇用の未来−コンピュータ化によって仕事は失われるか」でしたが、 これからの職業人生は、確かにただ漫然といま就いている仕事に 従事していればそれでよいという時代でもなくなりつつあります。

高齢者処遇に関するテーマも、元を正せば、20代初期からのキャリア論に 行き着くことになります。これからは、キャリアは他力本願ではなく、 自らが主体的に選び取っていく姿勢が問われることになるでしょう。

これは、これまでの人材マネジメントや人材育成のあり方、 リーダー像そのものに変更を迫る可能性を秘めた変化です。

様々な立場の人たちが一緒に働く「モザイク職場」で重要なことは、 自分にとって「価値ある仕事」とは何か? ということです。
そこでは、報酬の多寡が問題ではありません。
他人や世間の評価も重要ではなくなるかもしれません。
営利組織に属して手がける仕事とも限らなくなってくるでしょう。

自分にとっての適性とは何なのか。
磨き続けるべき専門性とは何なのか。
そして、あるべき生き方とは何なのか。

これからの職業人生とは、それらの問いに常に自問自答し続け、 自らを継続的に成長させていくことに他ならないのです。

世の中の技術革新のスピードは速く、グローバル化の波も止まることを 知りません。これから当面の間は、人事という多様性の海の中で、 本当の意味で個人の資質と能力が問われる「タレントの時代」が続く ということなのです。

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執筆者プロフィール
吉田 寿(よしだ ひさし)

ビジネスコーチ株式会社
常務取締役 グローバルタレントソリューション担当
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

1959年生まれ。 早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。
富士通人事部門、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・プリンシパルを経て、2015年1月より現職。

“人”を基軸とした企業変革の視点から、人材マネジメント・システムの再構築や
人事制度の抜本的改革などの組織人事戦略コンサルティングを、グループかつ
グローバルに展開している。
これまで担当したコンサルティング・プロジェクトは360件程度。

中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

主な著書として、
『世界で闘うためのグローバル人材マネジメント入門』(日本実業出版社)
『リーダーの器は「人間力」で決まる』(ダイヤモンド社)
『企業再編におけるグループ人材マネジメント』(共著、中央経済社)
『ミドルを覚醒させる人材マネジメント』、『人事制度改革の戦略と実際』
『人を活かす組織が勝つ』(以上、日本経済新聞出版社)
『社員満足の経営』、『仕事力を磨く言葉』(以上、経団連出版)
『人事超克』、『未来型人事システム』(以上、同友館)など。
その他論文、新聞・雑誌への寄稿、講演多数。

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