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「1on1」の勘所:❶ 1on1 導入前に知っておきたいこと

延べ 6 万人以上への 1on1 導入支援で分かった ビジネスコーチ(株)の成功する「1on1」のポイントとは

  • 1no1の勘所

近年、耳にすることが多くなった“1on1”ですが、普段の業務の中で行っている面談と何が違うのだろうか と疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。
今回は 1on1 の導入を検討されるうえで知っておきたいことをまとめました。



                 ~目次~
          1.1on1 とは何か
          2.1on1 が注目を浴びるようになった背景
          3.1on1 導入に関する世の中の傾向
          4.1on1 によって期待される効果
          5. 事例のご紹介
          6.定着におけるボトルネック
          7.まとめ

執筆者

1.1on1 とは何か?

1on1 とは、「上司と部下が 1 対 1 で定期的に行う対話」のこと。 部下の状況に合わせて、「ティーチング」「コーチング」「フィードバック」(※)を使い分けながら部下が主体の対話を定期的に行っていきます。
(※)ティーチング…部下にない知識やスキルを教えること、説明・指導すること    
   コーチング…部下に質問を投げかけることで、部下に気づきを与えたり思いや考えを引き出したりすること    
   フィードバック…部下に、事実を通じて自分が感じていることを伝えることで、部下自身が周囲からどう見えているのかを            知ってもらうこと

上司・部下間の対話の重要性を認識している企業が増えてきており、その対話を通して、部下の成⾧支援や上司・部下の関係性構築による働きやすい職場環境の実現、生産性向上、離職防止といった、各社が抱える経営課題の解決を目的として導入が進んでいます。

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2.1on1 が注目を浴びるようになった背景

1on1 が注目を浴びるようになった社会的背景を理解するうえでのキーワードは、「ビジネスシーンにおける急速な環境変化」「リモート環境下における働き方の変化」「人材の多様化・流動化による人材流出・生産性低下を防ぐためのエンゲージメントの向上」です。

以前より、人材育成の観点で“チームビルディング”の重要性は指摘されています。しかし、変化のスピードが速く先の読めない時代だからこそ、「従来型の組織」といわれる上意下達の組織、指示命令型の組織ではなく、過去にとらわれず物事を多角的に観察し、多様な個性を受容したうえで、個の強みを発揮しながらチーム一丸となって最善策を打てる組織であることが今まで以上に求められています。
また、社員全員が出社をすることが当たり前ではなくなったこと、そしてそれにより部下の姿が見えない・気軽にコミュニケーションが取れないといった環境の変化によるマネジメントの不安・部下の不安が出てきやすくなったことが、よりチームビルディングの必要性を増すことに繋がっているといえるでしょう。

だからこそ、今まで以上にコミュニケーションの機会を増やし、互いを理解・尊重して、個々の社員の特性や価値観・考えを最大限引き出しながら成果を上げていくことが求められているのです。

各社が抱える経営課題の解決のボトルネックである“忖度なく安心安全といえる”組織内環境の未整備や上司・部下の相互信頼の不足。
それらの改善策として上司・部下の対話の活性化が必要であり、その効果的な手段のひとつとして注目を集めている 1on1 は、近年急速に進んでいるリモート環境の後押しもあり、これから益々、各社の中で重要な取り組みとして位置付けられていくでしょう。

3.1on1 導入に関する世の中の傾向

では、実際にどれくらいの企業が導入をし、成果を上げているのでしょうか。「日本の人事部 人事白書 2020」によると、従業員規模にかかわらず約 4 割の企業が導入をしており、そのうち 1on1 の浸透を実感して いる企業は 65.3%と、3分の2 近くを占めています。
従業員規模別で見ると、1~100 人や 101 人 ~500 人規模の企業では 7 割が、1001~5000 人 や 5001 人以上の企業では 5 割強が 1on1 の浸 透を実感しており、中小企業のほうが、1on1 が 社内に浸透しているという手応えを感じているようです。

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また、同調査で「導入していない」と回答した企業を対象に今後の導入予定を調査したところ、今後の導入を予定または検討していると回答した企業が3分の1以上と、導入に前向きな企業がある一方で、「わからない」もかなりの割合を占めており、判断の決め手を欠いている企業は多いようです。 コロナ禍によるテレワークが推進されつつある今、1on1に関心を寄せているとのお声を聴くことが増えてきましたが、一方で、時間がかかることや効果が可視化しにくいことから悩まれている企業も一定数いるのが現状です。

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4.1on1 によって期待される効果

では、1on1 を行うことによって期待される効果にはどのようなものがあるのでしょうか。 ここでは「組織・上司・部下」のそれぞれの視点から 1on1 によって期待される効果を図で紹介いたします。

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図に記載した 1on1 によって期待される効果の詳細は、『❷1on1 によって期待される効果とボトルネック』で紹介していますが、自社にとって価値の比重が大きいのはどこかで判断するとよいでしょう。

5.事例のご紹介

実際に 1on1 を導入し、うまく運用している企業の事例もご紹介いたします。

〇パナソニック株式会社(コネクティッドソリューションズ社)

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“ビジネスモデルが見えにくい時代において、個々のレベルで答えが決まっていない課題について考え、解決を図る必要がある。そのためには、社内で自由に発言してもよい雰囲気、誰かの発言によって可能性を見出そうとするスタンスを確保し、社内の雰囲気を変えたい”という思いがきっかけで 1on1 の導入を検討されました。
コネクティッドソリューションズ社は、1on1 の導入に加えて、上司の変革に対する貢献を評価したいとの思いから 360 度評価もセットで導入しています。
1on1 開始時に社員向けアンケートでは、『上司との 1on1 に満足していますか』という質 問に対し、75%の方が『とても満足+満足している』と回答しており、また、『話しやす い雰囲気ですか』という質問に対しても、肯定が 8 割以上といった結果が出ています。

〇楽天株式会社

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楽天社ではエンパワーメント(=相手のパワーを増やすこと)を組織として目指す姿だとしています。
自身よりも社歴や社会人経験が⾧く、また外国人の部下を多く持つ上司が組織を飛躍的に伸ばすには、「構成員の価値観のかみ合い」に着目することだとし、上司が部下を深く知る場である 1on1 がマネジメントに有効だと考え、1on1 導入に踏み切られています。
1on1 トレーニングや個別コーチングはどの役員からも高評価で、「気づきが多かった」「他の人にも受けてほしい」「自分も継続して受けたい」などの声が上がっており、1on1を通して楽天グループとしての組織力をさらに向上させていくことを今後の課題として取り組まれております。

6.定着におけるボトルネック

前章では、他社の導入事例を紹介させていただきました。ぜひ導入を検討するうえで、他社事例もご参考ください。
最後に、導入後の“定着”までを見据えて、押さえていただきたいポイントをお伝えいたし ます。
それは、“外部の事例に依存することなく、自社としての導入戦略を明確にする必要があ る”ということです。
1on1 は各社が抱える経営課題の解決を目的に導入されているとお伝えしてきた通り、目的や課題、適した進め方は各社様々です。
ここでは、「上司・部下・組織・事務局」のそれぞれに焦点を当て、下の表の中でも特に よく出てくる、定着におけるボトルネックをご紹介いたします。各ボトルネックに対する対策のポイントに関しては、『❷1on1 によって期待される効果とボトルネック』でご紹介させていただきますので、併せてご覧ください。

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<上司編>
✓1on1の意義を理解していない
“部下とはいつも話しているから問題ない”、“忙しくてそんな時間は取れない”、また“部下には指示命令で十分業務が回っている”。
上記のような話がよく出てくる。

✓心理的安全性(※)に対する誤認
(※)心理的安全性とは、他者からの反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出せる状態、または不要な
   忖度や遠慮がなく積極的にコミュニケーションをとることができる状態のことを指します。
1on1は定着してきたものの、雑談ばかりになっており、“仲良しクラブ化”してしまっている。

✓上司の関与スキル不足
部下との信頼関係構築を軽視してしまう、良かれと思って、部下の好まない対応をしてしまう、そもそも効果的な対話のスキルが不足している。

✓自身の役割期待の認識不足
上司が自身の役割期待は成果を上げることだけと認識しており、本来最重要任務であるはずの“部下の育成”(=“能力発揮の最大化や自律的なキャリア形成支援”など)が含まれることを理解していない。

<部下編>
✓1on1の意義を理解していない
部下からも“上司とはいつも話している”、“忙しいから時間が取れない”といった声がよく出ている。

<組織編>
✓1on1を許容しない風土
現場や事務局は1on1に対して重要性を感じているのにもかかわらず、経営層が納得しないため導入できずにいる。

<事務局編>
✓自然に定着するという思い込み
トレーニングを実施するだけで、あとは上司各自が実践して、自然に定着すると考えている。

7.まとめ

今回、1on1を導入する前に知っておきたいこととして、「そもそも1on1とは何か」から、期待される効果、定着化におけるボトルネックまでを紹介してきました。
1on1の定着~効果の可視化まで時間はかかりますが、目的や状況に応じた対策を丁寧にとっていくことで、懸念点を払拭し、進めていくことができます。
導入前の情報収集・事前準備を行ったうえで効果的な推進をしていきましょう。

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