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「1on1」の勘所:❷-1 1on1 によって期待される効果と ボトルネック【上司編】】

延べ 6 万人以上への 1on1 導入支援で分かった ビジネスコーチ(株)の成功する「1on1」のポイントとは

  • 1no1の勘所

❶の記事では、1on1 を行うことで 上司・部下の関係性構築による働きやすい職場環境の実現、離職防止、また生産性向上につながるとお伝えしましたが、1on1 の導入によって期待される効果と定着におけるボトルネックには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
❷では 2 回に分けて組織・上司・部下のそれぞれに関して具体的にお伝えしていきます。


                 ~目次~
          1.期待される効果
          2.定着におけるボトルネック
          3.まとめ

執筆者

1.期待される効果:上司編

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期待効果①:部下が自律することで、結果的に自身の仕事に手が回りやすくなる
1on1 は部下のための面談の場です。上司側のスキルによるところもありますが、心理的安全性が担保された環境で部下の本音が引き出されることで、部下の“やりたい”、“チャレンジしたい”という思いを加速させ、部下が自律して行動するようになります。また、部下が自律して行動するようになり仕事に積極的に挑戦できる環境を用意することで、成長を促すことにつながります。
今まで部下が育たず playing マネージャーとして仕事を回さざるを得なかった状況から、本来の役割であるマネジメント業務にフォーカスした仕事ができるようになります。

期待効果②:自部門・チームの統制が取れる、意思疎通がしやすくなる
コラム❸でお伝えする「組織」視点の期待効果1と似ていますが、1on1 の実施によってコミュニケーションをとる頻度が増えてくると、共通認識を持てるようになり、結果的に同じ目的意識をもって業務に取り組めるようになります。
上司は部下の状況把握がしやくなるため、自部門・チームの状況が見えるようになり、マ ネジメントのしやすさにも良い影響が出てくるでしょう。
また、部下との関係性ができてくると、対話の仕方や距離の取り方も捉えやすくなるため、パワハラやセクハラの防止にもつながるとされています。

期待効果③:早いタイミングでリスク回避ができる
心理的安全性の高い組織では、部下が自ら今の状況や悩み、気づいているネガティブな事柄やリスクなどについても話してくれるようになります。
今までは事前に把握できなかった問題に対して早い段階で知り、対処できるようになるので、トラブルを未然に防ぐことができるようになるでしょう。

期待効果④:評価に対する部下の納得度が高まる
年に数回の評価面談でその年の評価を決めている企業がほとんどですが、評価に対する部下の納得度が低いことに悩まれている企業も多いのではないでしょうか。特にテレワークになってから部下の状況が把握しにくいといったお声が多く出ています。
だからこそ、定期的な対話の機会を持ち、部下の仕事の様子だけでなく、心身の状態や抱えている不安・心配事などを踏まえた部下の“事実の把握”が重要となるのです。この“事実の把握”ができるようになることで、部下のモチベーションを下げない、納得度の高い評価ができるようになります。

2.定着におけるボトルネック:上司編

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✓1on1 の意義を理解していない
“部下とはいつも話しているから問題ない”、“忙しくてそんな時間は取れない”、また“部下には指示命令で十分業務が回っている”。
こんな話を耳にすることは少なくないのではないでしょうか。

対策の着眼点①:1on1 の位置づけを整理し、共通認識を持つ
→業務で優先されやすいのは、どうしても“緊急度の高い業務”、つまり“指示命令”がメインとなる業務です。対して 1on1 は、以下の図から
 も分かるように、重要度は高いものの、緊急度が低く、優先順位が下がりがちです。しかし、1on1 は『期待される効果』でもご紹介した
 ように、継続して取り組むことで、部下が自発的に行動をするようになる、また早い段階でリスク回避ができることで緊急性の高くなる
 ものが減るといった効果が表れてきます。
 1on1 を足元の業務進捗とは明確に切り離し、未来に向けての時間投資だと認識してもらうことが大切です。

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対策の着眼点②:「関係の質」の向上が中長期的な「結果の質」の向上へつながることの理解を促す
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→「関係の質」と「結果の質」は組織が成果を上げ続け、成功に向かうための過程や仕組みを表した“組織の成功循環モデル”に出てく
 る“質”を表した言葉です。上記の表ではグッドサイクルとバッドサイクルの 2 種類のサイクルを表しており、なかなか成果が上がら
 ない、組織の風通しが悪いなどの悩みを抱えている企業は、多くの場合、「結果の質」から始まるバッドサイクルで回っています。
 一方で組織の風通しがよく、成果を上げ続けられるのは、「関係の質」から始まるグッドサイクルで回っている企業です。  
 企業である以上、目の前の業績の達成(=結果)に意識が向くのは当然ですが、結果にばかりフォーカスして部下との関係性をないが
 しろにすると、中長期的に見たときに、組織自体がうまく回っていないといった状況に陥る可能性があることを、管理職自身にイメ
 ージしてもらいましょう。

対策の着眼点③:自分主体の面談を体感し、部下の立場から 1on1 の価値を考える
→上司自身が 1on1 を体感する機会がなく、イメージができていない可能性があります。最近では、上司自身がプロのコーチから一定期間
 コーチングを受けられるよう、1on1 の取り組みの中に組み込んでいる企業も増えてきておりますが、上司自身が良質な対話の機会を通
 じて、“思考整理→気づき→行動変革→目標達成”のサイクルを経験することで、1on1 の実施に対して動機づけができます。

✓心理的安全性に対する誤認
1on1 は定着してきたものの、雑談ばかりになっており、“仲良しクラブ化”してしまっている状態です。これでは導入当初の目的と乖離してしまい、効果的な 1on1 を実施することができません。

対策の着眼点:心理的安全性は、部下を甘やかしたり慣れ合いをよしとするものではないことを認識してもらう
→心理的安全性は、組織成果を出すためのハイスタンダードな相互関与を可能にします。  成果を出すための高い仕事の基準があり、一定
 の緊張感があることを理解してもらうことが大切です。
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✓上司の関与スキル不足
部下との信頼関係構築を軽視してしまう、良かれと思って、部下の好まない対応をしてしまう、そもも効果的な対話のスキルが不足している。これも 1on1 を導入していくうえではきちんと対策を取るべきポイントです。

対策の着眼点①:「自分の価値観=部下の価値観」という思い込みを排除し、自分自身および部下をニュートラルに観る眼を養う
→人には共通点もあれば相違点もあり、周囲が自分の価値観とは違う可能性があると理解してもらうことが大切です。

対策の着眼点②:コーチングだけでなく、部下一人ひとりに適した関わり方(スキルの活用)をすることを意識してもらう
→上司に期待したいのは「部下一人ひとりの状況を見極めながら、
 部下に対して最適な関与を意図的に選択し、各自が主体性をもっ
 て職務遂行できるよう支援する」ことです。 コーチングのスキル
 だけマスターすればいいのではなく、必要なスキルを必要な人に
 対して適切に発揮するよう意識してもらうことがポイントです。

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✓自身の役割期待の認識不足
上司の役割期待は、成果を上げることだけでしょうか。Playing マネージャーになってい る方も少なくないため、正確に役割期待を認識し、実践方法を理解することが必要です。

対策の着眼点:「部下育成」を重要な役割として認識してもらう
→上司の皆様の最重要任務の中には、部下の育成、つまり“能力発揮の最大化や自律的なキャリア形成支援”などがあることを、上司の皆様
 自身にしっかりと認識してもらうことが極めて重要です。プレーヤーとしての役割期待も担っている上司の皆様が、足元の成果のみなら
 ず、中長期的かつ継続的な組織成長のために部下育成が必要であると納得してもらうことが、1on1 の定着を図るうえで大切になるの
 です。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。
特にボトルネックに関しては、今後の導入を検討する上で関心の高い部分かと思います。 さらに 詳細にお知りになりたい方は、弊社セミナー『【人事担当者向け】自社の 1on1 導入~定着までのボトルネックを見極める課題設定セミナー/事例紹介有』に、ぜひご参加 くださいませ。
次回❷-2 では【部下編/組織・事務局編】をご紹介いたします。

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