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日本電気株式会社

(人事制度改革)

カルチャー変革の実際 ~2年にわたる取り組みの詳細とこれから~

日本電気株式会社 シニアエグゼクティブ カルチャー変革本部長/人材組織開発部長 佐藤 千佳氏(写真左)
ビジネスコーチ株式会社 パートナーエクゼクティブコンサルタント/株式会社スリーシーズ 代表取締役 伊藤 善廣氏(写真中央)
ビジネスコーチ株式会社 BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ 吉田 寿氏(写真右)

カルチャー変革の実際 ~2年にわたる取り組みの詳細とこれから~

クライアント企業情報

日本電気株式会社

NECは2016年に3ヵ年の中期経営計画を発表したが、1年後にそれを撤回。新たにカルチャー変革の目標を立て、2018年1月にあらためて2020年中期経営計画を発表した。そこには変則的な変更を行っても優先すべき社内改革があったのだ。ビジネスコーチの伊藤氏、吉田氏が、NEC人材組織開発部のトップである佐藤氏に2年にわたるカルチャー変革の詳細を聞いた。

ご担当者様

日本電気株式会社 シニアエグゼクティブ カルチャー変革本部長/人材組織開発部長 
佐藤 千佳氏

お客様の課題・ご要望

    ・カルチャー変革

ビジネスコーチの提案・サポート

    ・パネルディスカッション

カルチャー改革の本質は「我々が変われるか」にある

はじめに吉田氏がカルチャー変革の本質について語った。

「よく『カルチャーが変わる』といいますが、この主語には間違いがあります。ここでの主語は組織の中の大半の人々であり、『我々自身』です。ですから、『カルチャーは変わるか』ではなく、『我々自身が変われるか』と問わなければいけない。その組織にいる大半の個人の発想と行動パターンが変わらないと、カルチャー変革は実現しません」

組織カルチャーはよく氷山モデルで例えられる。組織カルチャーは氷山の水面下の部分。ハードとソフトの両面から捉えていく必要がある。では、カルチャー変革が目指すゴールは何になるのか。

日本電気_画像15.jpg「具体的には、ビジョン、つまり組織のありたい姿を明らかにし、社員へのビジョンの浸透や共感度の測定も含めたサーベイを実施して、ハードとソフトの改革を実行していくことになります。ここではエンゲージメントがすべての土台になります。ではここから、NECグループにおけるカルチャー変革の事例をお聞きしましょう」

NECグループが進めたカルチャー変革:社員の力を最⼤限に引き出す改革

NEC2016年に3ヵ年の中期経営計画を発表したが、1年後にそれを撤回。実行できないという判断がなされたためだ。佐藤氏は撤回理由を次のように語る。

「企業としてやり抜く実行力が足りない、という課題が浮上しました。そこで、どうすれば変われるのかを考え、20181月に再度、2020年中期経営計画を発表しました。このとき、実行の柱としてすでに掲げていた『収益構造の改革』『成長の実現』に加え、新たに『実行力の改革(社員の力を最大限に引き出す)』が明示されたのです」

新たな柱を加えた目的は三つある。一つ目は「経営の結果を厳しく問うこと」。二つ目は「イノベーティブな行動や挑戦を促すこと」。NECには社員がリスクを恐れて挑戦しない、下のものが上に忖度する風潮があった。三つ目は「市場の変化・複雑化にスピーディーに対応すること」。NECは自前主義を好み、外部のDNAをなかなか持ち込もうとしなかった。しかし、それではこれからの時代に対応できないため、外部の人材を積極的に採用することにしたのだ。また、新たな中期経営計画では、社員への計画の伝え、浸透させる方法を大きく変更した。

「これまでの計画は、ただ発表するだけでした。今回からは、社長自らが説明し、社員の声と徹底的に向き合う方針を立てました。『2020中期経営計画ダイアログセッション』を企画し、海外を含め約1万人のグループ社員との対話を行ったのです」

セッションを通じ、社員からはさまざまな声が上がってきた。「ムダな仕事が多い。過去踏襲型の非効率な仕組みが積み重なっている」「リーダーや経営陣の声がなかなか聞こえてこない」などだ。

「社員の意見や要望は多種多様で、内容も深刻なものが多いことに気づかされました。中期経営計画をやり抜くことへの阻害要因が社内にあまたあるのだと。そこで経営陣は自分たちから意識を変えようと、2018年に何度も週末に集まって議論をしました」

その結果を受けて、20187月に変革プロジェクト「Project RISE」が始動する。目的は社員の力を最大限に引き出す改革の断行。そして、強靭で柔軟な企業文化を再構築し、力強く成長し続けるNECの実現だ。この中では、社員の声に基づき、変革のキードライバーとして六つの軸を掲げている。「経営力の再構築」「オープンで分かりやすいコミュニケーション」「Code of Values 浸透とマインドセットチェンジ」「社員の主体性と創造性を引き出すしくみ」「プロセスと仕事のシンプル化」「責任の明確化とフェアな評価」だ。

「特に注力したのは評価と育成の改革です。トップマネジメントで短期・中期の業績コミットメントを行い、行動の変革として行動基準「Code of Values」を策定。 1on1を徹底させ、9ブロックによる評価・育成・登用を開始しました。これにより多面的な評価を行い、適正な評価に基づく人材登用と適所適材を行っていきます」

策定した行動基準「Code of Values」は5項目ある。一つ目は「視線は外向き、未来を見通すように」。社会の変化に興味を持ち、未来に先回りして、新しい価値をお客様に提供できているか。二つ目は「思考はシンプル、戦略を示せるように」。本質的に考え抜き、シンプルでクリアな目標へ向け、強みを生かした戦い方を描けているか。三つ目は「心は情熱的、自らやり遂げるように」。課題を直視し、自分事化し、意志と情熱をもって、勝つことにこだわりつつ挑戦しているか。四つ目は「行動はスピード、チャンスを逃さぬように」。不確実性を受容し、走りながら考える柔軟な態度で、チャンスを逃さずアイデアを実行に移しているか。五つ目は「組織はオープン、全員が成長できるように」。体面や立場を気にせず、互いを高め合い、全員が活躍し成長できているかを社員に問う。

「行動基準の制定でこだわったのは言葉の表現です。社員の共感を得るために、話しかけるような心に響く言い回しにしました。そして、社員の成長を促す評価・育成では、成長の源泉である人に対し、フェアな評価と1on1フィードバックを導入し、とにかく何事も議論をするように心がけました」

日本電気様_画像16.jpg同時に働き方改革も実施した。一人ひとりのパフォーマンスを最大化するために、「生産的な業務環境の整備」「自立・自律した個人の尊重」「Code of Valuesの実践」「社員の成長へのフォーカス」に注力している。

「これまでは社員を取り締まるようなルールが多かったのですが、社員の判断に任せる方法に切り替えました。具体的にはスーパーフレックスタイム制度を採用し、コアタイムをなくしました。また、オフィスにはコワーキングスペースとして社員が集まれる場を設置。テレワーク活用を進め、固定電話は原則廃止、ドレスコードフリーも導入しました」

この変革をより力強く進めるためには、人事の力も重要だった。そこで2019年度には、人事のコアメンバーが集まって話し合い、強い個人、強いチームをつくるキャッチフレーズを打ち出した。「挑戦する人の、NEC。」だ。同時に具体的な四つの方針も示している。

「一つ目は、多様な挑戦機会。以前は『適材適所』と人ありきの人事でしたが、今は必要なポストを考え、それに合う人材を登用する『適所適材』を実践しています。オープンに人を登用し挑戦機会を与えたいと考えました。二つ目は、限りない成長機会。高みを目指すことで能力を伸ばす機会を与えます。三つ目は、フェアな評価、次へつながるリワード。成果はフェアに評価し、正当な報酬、次への成長機会やポジションで報いられるようにします。四つ目は、ベストを尽くせる環境、文化。働きやすい環境やカルチャーの充実をサポートし、全力で挑戦できる場をつくっています」

パネルディスカッション:カルチャー改革を成功させるには

伊藤:NECのような大きな会社が一度出した中期計画を撤回し、あらためて打ち出すのは実に大変なことですね。そのときの社員の反応はいかがでしたか。

佐藤:社員もこれまでとは違うことが起きていると感じたようです。過去にもカルチャーの変革には取り組んできましたが、うまくいかずに終わっていました。今回は中期経営計画の一つに「実行力の改革(社員の力を最大限に引き出す)」として、人と組織、カルチャーの変革を明確に掲げました。この点に変革への本気度を感じたと思います。

伊藤:今回、社員の新たな行動基準を5項目掲げられていますが、どの会社においても社員の意識を変えることは難しいものです。社員の意識改革を行ううえでポイントになったたことは何ですか。

日本電気様_画像17.jpg

佐藤:一つ目は徹底してトップから発信すること。社長である新野が自ら社員とのセッションに参加し、変革の重要性を訴えました。二つ目は社員と双方向でコミュニケーションを行うこと。今回はカルチャー変革本部や人事が全国を行脚してワークショップを開き、社員に言葉で伝え、社員から意見をもらいました。三つ目は改革への取り組み度合いの評価への反映です。変革をしっかりと浸透させるためには有効な手段だと思います。

伊藤: 1on1には、カルチャーを変えるうえでどんな効果を期待したのでしょうか。

佐藤:これまでのように年度始めに目標を設定し、1年後にできた、できないと言うだけでは何も変わりません。そこで、年度途中で上司が目標の進捗を確認し、軌道修正やアドバイスを行うため、1on1を導入しました。制度は上が行わないと浸透しないので、社長自ら四半期ごとに行ってもらっています。

伊藤:社員の1on1への反応はいかがですか。

佐藤:うまくいっていると感じています。パルスサーベイで四半期ごとに調査するのですが、3ヵ月以内に1on1をした人は7割くらい。1on1の内容については、「有意義だったと強く思う+思う」でほぼ半数です。

伊藤:私たちも企業の1on1のお手伝いを数多く行っていますが、そこでの感触からすると、社員の半数が有意義に感じている状況は成功と考えていいのではないでしょうか。やはり地道な取り組みが功を奏していると思われますか。

佐藤:研修でしっかり1on1の方法を学ばせていますが、それを実践できているかが成功の分かれ目だと思っています。

伊藤:もう一つ気になったのは9ブロックの採用です。なぜ今、採用されたのでしょうか。

佐藤:これまで行動部分が評価に入っておらず、それを組み込むためです。上司も行動評価に慣れていないために、9ブロックというベーシックな仕組みを選びました。世の中は今ノーレイティングがトレンドですが、NECにはそこに一足飛びに行けるだけの素地がありません。まずは成果と行動の評価が学べる9ブロックに取り組んで、マスターしていきたいと思います。

伊藤:働き方改革にも取り組まれていますが、現状はいかがですか。

佐藤:在宅勤務やフレックスタイムは、制度としては早くから取り入れていましたが、使われていませんでした。そこで、社員が一斉に体験する期間を設けたのです。まず社員に体験してもらい、そこで見えた課題をつぶしていきました。この実験は改革の1年目と2年目では結果が全く異なりました。1年目は上司・部下ともに、お互いの姿が見えないという不安の声が多く聞かれました。しかし、2年目はパフォーマンスマネジメントに取り組んだこともあって、同じような不安はほぼなくなりました。それでも残っている課題はバーチャルとリアルでのコミュニケーションの取り方、雇用形態の関係で全員がテレワークできない部署の働き方、といったものがあります。

吉田:ここからは、聴講者の皆さまの質問に答えていただこうと思います。「こうした改革は他部門・他部署との連携も必要になると思いますが、どのように行われましたか」

佐藤:NECでも「過去の改革では人事が宣言だけ行い、あとは現場頼みになっていた」という声が聞かれていました。そうならないためには、改革について現場でも議論し、その問題意識をヨコに広げていく必要があります。そこで部署ごとに若手のリーダー層に集まってもらって、横断的な変革プロジェクトを実施しています。

吉田:次の質問です。「マネジャーへの教育はどのように行いましたか」

佐藤:変革については経営層から勉強を始め、それを順に下におろしていく方法を取りました。心がけたのは単にトレーニングとして行うのではなく、実施の背景を語って納得させることです。人事が背景を伝え、社員からの疑問にはすべて答えるようにしました。関連会社の役員を集めた勉強会では、冒頭で社長の新野が実施の背景を語り、意識付けを行っています。

吉田:本日は参考になる話がたくさん聞けました。NEC様の今後に注目していきたいと思います。ありがとうございました。



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