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社員目線の取り組みで連携を深め、人的資本経営を推進。創業90年企業が目指す新たな“SHIN-KA”とは

連載コラム「CHRO対談」第1弾:昭和産業株式会社

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トップ写真.jpg HRエグゼクティブコンソーシアム 代表 楠田祐氏の協力のもと企画された本対談では、採用や育成、評価、働き方改革、人的資本経営、DE&Iなど、企業の人事戦略・変革に関わるテーマを扱い、ビジネスコーチ株式会社エグゼクティブコーチ本部・部長の出口がさまざまな企業の経営者や人事部門の担当者と対談を実施。企業の経営者や管理職、経営企画、人事・教育などの組織・経営の業務に従事している方へ向けて、日ごろの業務やこれからの戦略策定におけるヒントをお届けします。

***


ビジネスを取り巻く環境がダイナミックに変わり続ける時代。変化への対応が求められるのは、長い歴史と事業実績を持つ優良企業も例外ではありません。

1936(昭和11)年に創業し、まもなく90周年を迎えようとしている昭和産業株式会社でも、“SHIN-KA”(進化・真価・深化)をテーマにした中期経営計画に基づく変革の取り組みが進められています。新たな事業展開によって組織が複雑化する中、異なる強みを持つ社員の連携を加速し、積極的に挑戦する風土をつくるためには何が必要なのでしょうか。同社の取り組みと実践知を聞きました。

執筆者

【プロフィール情報】
昭和産業株式会社
人財戦略部長 村田吾大(むらた・ごだい)

昭和産業株式会社
人財戦略部 D&I推進室長
佐藤元洋(さとう・もとひろ)

ビジネスコーチ株式会社
エグゼクティブコーチ本部 部長
出口亮輔(でぐち・りょうすけ)

ファシリテーター:
HRエグゼクティブコンソーシアム
代表 楠田祐(くすだ・ゆう)

長期ビジョン「“SHIN-KA”宣言」に込めた強い使命感を全社員に共有

楠田:昭和産業株式会社はもうすぐ創業90周年ですね。90年前といえば日本はまだ戦前。それから戦中・戦後にかけて、当時の日本は食べること自体がままならない状況にありました。そんな時代から日本の食料供給を支え、異業種のM&Aなども積極的に進めて事業を拡大してきた。人々の生活を守りながら90年の歴史を築いてきたのは本当に素晴らしいと思います。

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村田:ありがとうございます。創業者は「農産報国」を掲げ、肥料の製造販売から事業をスタートさせました。戦後復興から高度経済成長期へ進み、単にお腹を満たせればいいという時代を過ぎれば、次はおいしいものを食べたいというニーズが高まっていきます。当社は「食を通じて人々の暮らしを豊かにしたい」という想いで事業を拡大してきました。例えば、一般的な小麦粉がより簡単においしい物を作れる天ぷら粉やホットケーキミックスに変わっていくように、専門領域を伸ばしてきたのです。

出口:現在の「穀物ソリューション・カンパニー」としての姿につながる成長の歴史があったのですね。2023年度から2025年度にかけては新たな中期経営計画を定めています。

村田:中期経営計画23-25では「SHOWAの“SHIN-KA”宣言」を掲げています。この中で重視しているのは、企業としての社会的責任を追求していくことです。私たちが取り扱うのは、主食を担う穀物をベースとした食品。たとえ災害といった緊急事態が発生しても、当社はお客さまのもとへ届け続ける供給責任があり、その社会的使命を果たしながら企業価値を持続的に向上させていかなければならないと考えています。

出口:強い使命感があるのですね。この使命感を社内へ浸透させていくために工夫していることはありますか。

佐藤:全社員を対象として年1回「昭和塾」と名づけた研修を実施し、ビジョンの浸透を図っています。職種や役職の異なる全社員に通じるコンテンツを企画するのは簡単ではありませんが、ビジョンの共有をはじめ、安全・安心の追求やハラスメント防止などさまざまなテーマで講座を展開しているところです。

出口:村田さんと佐藤さんが所属している人財戦略部は、どのようなミッションを担っているのでしょうか。

村田:人財戦略部は人的資本経営、すなわち企業の持続的成長と従業員のウェルビーイング向上を進めるための部門として2023年に設立され、人的資本企画室、人財マネジメント室、D&I推進室、人事管理室の4組織で構成されています。

佐藤:私が所属するD&I推進室では、ウェルビーイングやダイバーシティなど社員目線での取り組みを担っています。施策を進める上では社内の各部門・各拠点から幅広く調査やヒアリングを行い、現場が課題を感じていることについて取り組みを行っています。最近では工場や技術部門、グループ会社からもさまざまな相談が寄せられるようになりました。

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カルチャーも働きやすさも組織によって異なる。部門の壁を越えて人財連携を促すために

楠田:御社の統合報告書などを拝見していると、戦略と人財の結び付けを意識的に行い、機能させている印象があります。まさに人的資本経営ですね。組織改編も大胆に行っていますが、現場からの反応はいかがですか。

村田:2023年春、創業以来初となる抜本的な組織改編を行いました。しかし、当社では昔から組織間の人財交流の重要性が盛んに語られており、大きな混乱はなかったと感じています。小麦粉の営業部で長年働いていた方が冷凍食品工場へ異動するなど、それまでの専門が異なる領域へ移ることもあり、世間で言うところのリスキリングが昔から行われていました。私自身もパン業界向けの小麦粉の営業職から人事へ異動しており、リスキリングの重要性を体感した1人です。こうした文化が元々あるため、組織改編による大きなハードルはなかったと感じています。

出口:とはいえ御社ではM&Aも盛んに取り組まれ、グループ企業や部門が複雑化しているのも事実だと思います。他社ではこうした理由によって人財の連携が難しくなることも珍しくありません。コミュニケーション上の問題は発生していませんか。

村田:当社でもさまざまなコミュニケーションの課題があると思います。たとえば製品群でいっても「粉」と「油」では学ぶことがまったく違いますし、技術的にも個々のグループ会社や部門で求められる知識やスキルが異なり、連携は簡単ではありません。

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佐藤:組織によってカルチャーも違いますね。それぞれが異なる事業を進めている中で、どのように横串を刺していくかは大きな課題です。エンゲージメントサーベイの結果を見ると、仕事に対しては一定の満足度があるものの、部門によっては会社へのエンゲージメントが低い傾向が見えており、どのようにして盛り上げていくかを考えているところです。

出口:エンゲージメントを高めるために、現在はどのような取り組みを進めているのでしょうか。

村田:一例を挙げると、当社の看板商品である天ぷら粉を用いた社食の取り組みがあります。天ぷらを軸に全社を盛り上げるため、月初めの営業日を「天ぷらの日」として設定。全工場の食堂で、「昭和の天ぷら粉」を使った社食を提供しています。工夫を凝らしたメニューを提供していただいていることもあり、毎月完売の人気企画となっています。

佐藤:工場ではこうした施策がきっかけとなり、エンゲージメントや横のつながりが高まっていると感じます。もちろんこれだけですべてが解決するわけではありません。当社の事業形態上、同じ工場の中でも、製造しているものが違えば労働環境もまったく違い、結果としてエンゲージメントサーベイのスコアにも差が出ている現状があります。

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出口:何が違いを生んでいるのでしょうか。うまくいっている職場にはどんな特徴がありますか。

村田:マネージャーの方が中心となってダイバーシティへの対応や心理的安全性の確保などを進めている印象です。総じて、メンバー間のコミュニケーションが密に取れている職場は高いスコアとなっていますね。

佐藤:実際の現場を見ると、スコアが高い職場では立場や役職に関わらずフラットなコミュニケーションが行われており、環境面でも働きやすさに配慮しています。こうしたうまくいっている職場のノウハウを横展開するために、私たちから現場を訪問して情報共有し、時には個別に改善の提案を行う取り組みを進めています。これは工場の施策と連動させながら一緒に行うように工夫していますね。

「物を言いやすい風土」を拡大し、社員の挑戦を後押ししたい

楠田:人財戦略部から積極的に働きかけることは確かに大切だと思います。加えて、現場の管理職が部下を支援する1on1などの場も重要ではないでしょうか。業務の進捗確認をするためではなく、部下のキャリアビジョンを聞いたりモチベーションを高めたりするための対話の場です。

村田:おっしゃる通りです。1on1は多くの部署で行っているものの、特に工場での実施が課題になっています。工場内にはユニットという組織単位があり、それぞれにユニットリーダーがいますが、部下の数が多くて苦労しているのが現状です。

出口:他社でも工場での1on1に苦労しているという話をよく聞きます。シフト制勤務のため部下との時間を合わせづらいという物理的な問題もあり、対話の時間に制約がかかってしまうためです。解決策として、管理職が現場を歩き回りながら部下に声をかけ、その場で短い1on1を行うという手法を取り入れているところもあります。

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楠田:手法はいかようにも工夫できるのではないでしょうか。現場から出てくる「忙しくてできない」の声は、ある意味では都合の良い断り文句でもあるのです。それでも確実に実行している職場では、1on1の場に価値を感じている部下も多いはず。価値ある1on1の成功体験を共有し、横展開していくことも大切ですね。

佐藤:はい。上司と部下のコミュニケーションはもちろん、今後はメンバー間のコミュニケーションにも光を当てていきたいと考えています。心理的安全性が高い職場では、自ずとエンゲージメントも高まっていくはずです。焦らずに長期的な視点で取り組んでいきたいですね。

出口:2025年度までの中期経営計画の先には、90周年、100周年という大きな節目が待っています。今後の展望をどのように描いていますか。

佐藤:社員が積極的に挑戦する風土をつくるためには、まず一人ひとりが「物を言いやすい」風土をつくることが必須だと考えています。D&I推進室の取り組みを通じてその風土を拡大し、会社全体の発展へつなげていきたいと思います。

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村田:当社はこの10年でさまざまな事業を展開し、新たな領域へ進出してきました。社員が夢を持って新たなことに挑戦するチャンスが増えてきました。私たちは裏方としてその環境をさらに発展させ、実際に多くの社員が「挑戦したい」と思えるような仕組みを整えていきたいと考えています。

楠田:本日は、ありがとうございました。



(執筆・写真提供者:株式会社プレスラボ)

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